プジョー RCZビジョン発表|500馬力・全固体電池・2026年のフランス車の未来
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プジョー RCZビジョン発表|500馬力・全固体電池・2026年のフランス車の未来

2026.10.13

2026年10月11日、プジョーはコンセプトカー「RCZビジョン」を発表した。2009年から2015年にかけて生産され、今やコレクターズアイテムとして名高いRCZクーペの精神的後継作として位置づけられるこのモデルは、単なるショーカーにとどまらない。500馬力の電動パワートレイン、全固体電池による航続距離600kmの実現、そして10分でバッテリーを10%から80%まで充電できる1,000Vアーキテクチャーなど、次世代プジョーが採用する技術のショーケースとなっている。プジョーが「ドライビングプレジャー」をどう再定義しようとしているのか、その全貌をRoadly編集部が詳しく読み解く。

この記事のポイント

RCZの名を冠した理由

プジョー公式の発表によれば、RCZビジョンは「ブランドマニフェスト」と定義されている。マニフェスト、つまり宣言書だ。単に新しいクルマのデザインを見せるためではなく、ドライビングプレジャーとフランス的なパナッシュ(気概)をイノベーション戦略の中心に置くという、ブランドとしての意思表明である。

オリジナルのRCZは2009年から2015年まで生産されたクーペで、プジョーらしいデザインと走りの哲学を体現した一台として、今なお根強いファンを持つ。その名を新たなコンセプトカーに与えたことは、プジョーが「エモーション」というキーワードを電動化時代においても絶対に手放さないという強いメッセージに他ならない。

プジョーCEOのアラン・ファヴェ氏は「RCZビジョンは、未来に向けたビジョンを示す一台だ。デザインとテクノロジーが融合し、本能的で洗練された、強烈に魅力的な体験を生み出せることを証明している」とコメントしている。日本市場に向けた具体的な情報はプレスリリースに記載されていないが、次世代プジョー全体の方向性を示す羅針盤として注目すべき存在だ。

プジョー RCZビジョン リア斜め後ろ ダブルバブルを受け継ぐガラスルーフ

全固体電池が変えるEVの常識

RCZビジョンの核心にあるのは、Factorial Energyと共同開発した全固体電池だ。プジョー公式発表によると、電池の厚みはわずか110mmで、これが低いシルエットの実現を可能にしている。エネルギー密度の高さが「小さい体積により多くの電気を蓄える」ことを可能にし、航続距離は最大600kmを目標としている。

注目すべきは充電性能だ。1,000Vアーキテクチャーと組み合わせることで、バッテリー残量10%から80%までわずか10分で充電できるとされている。現在主流の800Vシステムを採用するポルシェ・タイカンやヒョンデ・アイオニック5でも、同等充電は18〜20分程度が一般的であることを考えると、1,000V+全固体電池の組み合わせが目指すスピードは次元が異なる。

プラットフォームはSTLA Oneをベースとし、X-バイ-ワイヤなどの先進技術に対応するよう設計されたモジュラー型次世代プラットフォームだ。コンポーネントの再利用・リサイクルへの対応も織り込まれており、サステナビリティの観点も考慮されている。エネルギー消費量はWLTPサイクルで11.5 kWh/100km(確認中)を目標値としており、500馬力のモデルとしては相当に優れた数値だ。

プジョー RCZビジョン サイドビュー 薄いバッテリーが可能にした低いシルエット

ハンドルが丸くなくていい理由。次世代i-Cockpitの思想

プジョーがi-Cockpitを初採用してから約15年。小径ステアリングホイールと高い位置に設置された計器盤の組み合わせは、プジョーの「ドライバーズカー」アイデンティティそのものだった。RCZビジョンはそのi-Cockpitを次の段階へと引き上げる。

キーテクノロジーが「ハイパースクエア」だ。正方形に近い形状のステアリングコントロールデバイスで、四つのリング内に主要機能が集約され、手を動かさずに操作できる。そしてこのハイパースクエアは、次期プジョーE-208にも量産仕様として搭載されることが公式発表されている。つまりRCZビジョンで見えるUIは、近い将来の量産車に直接つながるリアルな技術なのだ。

ステアリング上方には透明マイクロLEDディスプレイが配置され、ドライバーの視野内に必要な情報を表示する。中央には縦型の浮遊ディスプレイがあり、インフォテインメントやナビを担う。この中央ディスプレイは完全にオフにでき、透明構造のために消えたように見える設計だ。「多ければいい」ではなく「必要なものだけ、的確に」というプジョーの哲学が色濃く表れている。

またRCZビジョンはプジョー初のブレーキ・バイ・ワイヤを採用する。ペダルと制動機構を電子制御に置き換えることで、よりきめ細かな制動力の調整と回生ブレーキのシームレスな統合を実現するとされる。ステア・バイ・ワイヤとの組み合わせでは、車速に応じてステアリング比が自動的に変化し、低速時は一回転弱で最大切れ角に達する一方、高速域では穏やかな特性に切り替わる。

プジョー RCZビジョン Hypersquare と透明マイクロLEDディスプレイ

新デザイン言語「Feline Future」の正体

RCZビジョンはプジョーの新デザイン言語「Feline Future(フィーライン・フューチャー)」の最初の表現と位置づけられている。デザインディレクターのマティアス・オッサン(Matthias Hossann)氏は「ネコ科動物の強さと素材の精度から生まれた、本能的かつ官能的なデザイン」と表現している。

5つの指針はFreedom(自由)、Courage(勇気)、Elegance(エレガンス)、Inner force(内なる力)、Instinct(本能)。スタンスは前傾みで「今にも飛びかかろうとする」姿勢をとり、広い肩、深くえぐられた側面、丸みを帯びたフォルムを持つ。キャビンはガラスバブルと表現されるほど透明感のある薄いルーフラインで、これはオリジナルRCZが持つ「ダブルバブルルーフ」へのオマージュでもある。

ライトシグネチャーも刷新された。プジョーの象徴「三本のツメ」が水平に並ぶ超細型デザインに生まれ変わり、フロントでは超小型の「シンレンズ」LEDヘッドランプとセットで「ライオンの眼差し」を構成する。バンパーにはマイクロ穿孔で「RCZ」の文字が刻まれ、エアインテークグリルも「RCZ」モチーフのマイクロ彫刻で構成されるなど、徹底してディテールに意志を込めている。

ホイールは前21インチ、後22インチのフォージドアルミ製で、スポークデザインの周囲に配した小さな三角モチーフは初代RCZへの敬意だ。塗装にはリサイクルアルミ由来の素材を採用し、美しさと環境責任の両立を試みている。

プジョー RCZビジョン フロント 水平の3本ライトとRCZのマイクロパーフォレーション

内装。フランス流のファインクラフツマンシップ

キャビンの印象を一言で表すなら「明るく包まれるコクーン」だ。ダッシュボードは内部コンポーネントに沿って彫刻的に造形され、エアベントは使用しないときはダッシュボードの中に収納して消えるギミックを持つ。

特筆すべきはシートだ。「PELINOVA」レザーと名付けられた素材は、皮革製品産業から出た端材を再利用したもので、なめしを施さない動物皮革の廃材活用という点でサステナビリティ面でも意欲的な取り組みだ。アルカンターラと組み合わせ、明るいライトブルーの配色でキャビン全体に統一感をもたらしている。左右非対称形状のシートはグランドツーリングコンフォートを意識した設計で、後席には成人2名が快適に座れるスペースが確保されている。リアシートバックは倒してラゲッジスペースとしても使える実用性も備わる。

ダッシュボードには、フランスの時計ブランド・SERICAが手がけた「パレード」ウォッチが組み込まれており、センターディスプレイにはそのデジタル解釈版が映し出される。フローティングセンターコンソールにはアルミ削り出しの物理ボタンが並び、フロストガラスの台座に載る。こうした細部からは、プジョーが「テクノロジーで感情を高める」という哲学を室内デザインにまで一貫させていることが読み取れる。

プジョー RCZビジョン ライトブルーで仕立てたインテリアとシート

プジョー RCZビジョン 主要諸元

項目 RCZ VISION
最高出力 500 hp
航続距離 最大 600 km
電費(WLTP複合) 11.5 kWh/100km(目標値・確認中)
バッテリー 全固体電池(Factorial Energyと共同開発)/厚さ 110 mm
電圧 1,000V
急速充電(10→80%) 10分
プラットフォーム STLA One ベース
ステアリング/ブレーキ ステア・バイ・ワイヤ(Hypersquare)/ブレーキ・バイ・ワイヤ(プジョー初)
運転支援 レベル2++(ハンズオフ機能)
ホイール 鍛造アルミ 前 21インチ/後 22インチ
乗車定員 4名

※プジョー公式プレスキット(2026年10月11日付)より。コンセプトカーのため、生産計画・価格・日本導入は未発表。

Roadly編集部コメント

RCZビジョンを見て真っ先に思うのは、プジョーが「EVになることへの言い訳をしない」姿勢を明確にしたということだ。500馬力、10分充電、ステア・バイ・ワイヤ、ブレーキ・バイ・ワイヤ。数字だけ並べれば競合と比較したくなるが、このクルマが本当に面白いのは技術を「ドライバーとの対話」に直結させようとしている点だ。ハイパースクエアが次期E-208に採用されるという発表は重要で、コンセプトカーのUIが量産車に即座に降りてくる流れは、近年のプジョーにリアリティがある。日本でプジョーといえば208や2008、308が身近な存在だが、こうした技術の方向性が市販モデルへ波及するなら、次の乗り換えタイミングで視野に入れたいブランドになる。

RCZビジョンは現時点でコンセプトカーであり、量産計画や発売時期は発表されていない。ただし少なくともハイパースクエアは、次期E-208で市販車に降りてくることが明言されている。日本仕様の展開やプジョー公式による追加情報の公開を、引き続き注目していきたい。

情報源・出典

本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。

※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。

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