2025年、イタリアの名門コンクール「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」において、BMWはアルピナブランドの将来像を示す衝撃的なコンセプトカー「ヴィジョン アルピナ」を世界初公開した。ファミリー感の強いスポーツモデルを作り続けてきた旧ボーフェンジーペン時代のアルピナとは一線を画し、新生アルピナが目指すのはメルセデス・マイバッハやレンジローバーと同じ土俵で戦える「超高級グランドツアラー」の世界。英国の権威ある自動車メディアAutocarが詳細を報じており、2027年の市販第1号車に向けたブランド戦略の全貌が明らかになってきた。
この記事のポイント
- 全長5.2mのシャークノーズ2+2クーペ。ロールス・ロイス・レイスと同等のボディサイズを持つ超大型コンセプト
- 市販第1号車はBMW 7シリーズベースで2027年発表・2028年初頭納車開始予定
- メルセデス・マイバッハと直接競合するポジショニングで、年間生産台数はボーフェンジーペン時代と同水準の約2500台を維持
新生アルピナが描く超高級GTの姿
「ヴィジョン アルピナ」はシャークノーズを持つ2+2クーペのコンセプトカーで、全長は5.2メートルとロールス・ロイス・レイスに匹敵するサイズ感を誇る。このコンセプトはあくまで量産直結の試作品ではなく、アルピナという新ブランドの「美的宣言書」として位置づけられているという。
デザインの監修を担ったのは、BMW中・大型&ラグジュアリークラスの責任者であり、かつてポールスターのデザインチーフも務めたマクシミリアン・ミッソーニ氏。同氏は1978年のアルピナB7ターボをビジョン アルピナのデザイン面での直接的なインスピレーション源としたと語っている。マルチスポークホイール、チンスポイラーへのワードマーク、4本出しエキゾーストといった要素は、ボーフェンジーペン時代のアルピナへの敬意をしっかりと継承している。
注目すべきはデコセットストライプの処理だ。従来はデカール(貼り付けシール)が主流だったが、新生アルピナでは職人による手描き塗装が採用される予定とされている。また、フロントの「ドラフトサーフェス」と呼ばれる面にあしらわれたさりげないクローム処理は、往年のBMW 507へのオマージュとも解釈できる。

ラグジュアリーインテリア。時計職人の技に触発されたキャビン
外観と同様に、インテリアも超高級ブランドとしての立ち位置を強烈に主張するエリアとなっている。ラヴァリーナグレードのレザーをふんだんに使用し、手触りを重視したオープンポアウッドフィニッシュ、そして高級時計製造から着想を得たというマシンカットのメタルディテールが随所に散りばめられている。
さらに、センターコンソール後方にはクリスタルグラスウェアがビルトインされる演出まで盛り込まれており、これはどう見ても通常のBMWが踏み込まないテリトリーだ。アンビエントライティングも独創的な仕様とされており、「インテリアに入った瞬間、別世界に連れ込まれる」感覚を狙ったと推察される。
こうした仕様の総体として、メルセデス・マイバッハやレンジローバーと直接対決できる豪華さと、フェラーリ並みの希少性を両立させることがBMWの目標とされている。高級品でありながら「ありふれない」存在感を演出することが、新生アルピナの核心的な価値観となりそうだ。

V8エンジン搭載。BMWとロールス・ロイスの間に座る価格帯
パワートレインについて、重要な情報も徐々に明らかになっている。コンセプトには縦置きV8エンジンがフロントマウントされ、「BMWのMモデルが持つ攻撃的なスポーツ性よりも、アルピナらしい洗練さと余裕あるパフォーマンスのバランスを保つために設計された」とBMWは説明しているという。
量産モデルへの搭載が有力視されているのは、4.4リッター・ツインターボV8自然吸気エンジンで、電動アシストは持たず、BMWグループ他モデルとは異なる独自チューンが施される見込みだ。ただし、これは取材ベースの情報であり、BMWが公式にコンセプトのパワートレイン詳細を公表しているわけではない点は留意が必要だ。
サスペンションについては、ボーフェンジーペン時代のアルピナを特徴づけてきた「コンフォートプラス」ダンパーセッティングが市販車にも踏襲されることが確認されている。市場ポジションとしては、現行のBMWラインナップを超える価格帯に設定されるものの、ロールス・ロイスには届かないゾーンを狙うとされており、ちょうどその中間に空いていた「超高級BMW」という新たな市場を埋める役割を担う。

2027年登場の市販第1号車と今後のラインナップ
報道で伝えられている具体的なスケジュールでは、市販第1号車はBMW 7シリーズをベースとしたモデルで、2027年に正式発表・2028年初頭から納車が始まる予定だ。続く第2弾はBMW X7をベースとしたSUVになることも、BMWのテクノロジー責任者ヨアヒム・ポスト氏が以前明かしている。
新生アルピナの最高責任者オリバー・フィールヘヒナー氏は年間生産台数はボーフェンジーペン時代と「大幅には変えない」方針を示した。ボーフェンジーペン末期の年産2500台規模を維持することで、希少性を担保するという考えだ。同氏はまた、中国ではメルセデスSクラスの2台に1台がマイバッハ仕様として売れているという市場データに言及しており、BMWがアルピナに期待する成長可能性の大きさを示唆している。
一方で、旧来のB3(3シリーズベース)やB5(5シリーズベース)のようなスポーツサルーン路線は、新しいブランドポジショニングには馴染まないとみられている。電動モデルについても検討中とされているが、当面は内燃機関モデルに集中する方針をフィールヘヒナー氏は強調している。
Roadly編集部コメント
旧来のアルピナファンにとっては、B3やB5が消えゆく可能性は複雑な心境かもしれない。しかし、BMWが描く新生アルピナのビジョンには確かな説得力がある。メルセデス・マイバッハが証明したように、超高級派生ブランドは本家ブランドの価値も底上げする効果を持つ。年産2500台という規模感は、フェラーリやベントレーに比べれば大きいが、量産車とは一線を画す希少性を保てるギリギリのラインでもある。ヴィジョン アルピナのインテリアに見られる「時計職人の技法からの着想」というコンセプトは、メカニズムへの探求心が強いBMWオーナー層の琴線にも触れる表現で、ブランド移行の戦略として巧みだと感じる。2027年の市販第1号車発表が今から楽しみだ。
新生アルピナは、ただのBMWチューナーではなく「BMW以上・ロールス・ロイス未満」の独自ポジションを確立しようとしている。2027年の市販モデル発表に向け、続報から目が離せない。
情報源・出典
- 媒体:Autocar(GB)
- 元記事タイトル:This wild new BMW concept shows how Alpina will go after Bentley | Autocar
- 元記事URL:https://www.autocar.co.uk/car-news/new-cars/bmw-reveals-striking-v8-coupe-show-future-alpina
本記事は上記の海外メディア記事を情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。元記事の文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細な原文は上記リンクよりご確認ください。
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