2024年末に全世界を驚かせたジャガーの大胆なブランドリニューアル。その象徴的な存在として発表されたのが、トライモーター構成で1000馬力超を誇るハイパーEV「Type 00」だ。英国の老舗自動車メディア「CAR magazine」チャンネルは、この異端とも言えるモデルを実際にドライブし、ドリフトを含む過激な走りを披露している。かつての「美しき英国スポーツカー」というイメージを捨て、EV時代のハイパーカーとして生まれ変わろうとするジャガーの本気度が、そのひとつひとつの挙動から伝わってくる映像だ。ドライバーにとっては現実離れしたスペックに見えるかもしれないが、この1台が示す方向性は、近未来のスポーツカーの姿そのものと言えるだろう。
この動画のみどころ
- 1000馬力超のトライモーター構成がもたらす圧倒的な加速性能と横滑り走行
- ジャガーのブランド刷新を体現するコンセプトカーレベルのエクステリアデザイン
- 実走テストで確認されたEV特有の瞬発トルクとリアルワールドでのハンドリング特性
- CAR magazine編集部が体感した「新生ジャガー」の走りの哲学と将来性
1000馬力・トライモーターの正体
ジャガー「Type 00」が搭載するとされるトライモーターシステムは、フロントに1基、リアに2基のモーターを配置するAWD構成と考えられている。システム合計出力は1000馬力(約746kW)超と公表されており、これは現在量産EV市場においてもトップクラスの数値だ。
EVにおけるトライモーター構成は、テスラ「Model S Plaid」やリマック「ネヴェーラ」などが採用した実績があるが、ジャガーが伝統的な英国スポーツカーブランドとしてこのアーキテクチャを選んだことには大きな意味がある。単純な直線加速だけでなく、モーターごとのトルクベクタリング制御によってコーナリングの精度を高め、ドライバーの意図に忠実に応答する「スポーツカーらしい走り」を電動で実現しようという狙いが透けて見える。
CAR magazineの映像では、コントロールされたドリフト走行も披露されており、単なるショーカーではなく走ることに本気で向き合ったモデルであることが伝わってくる。テール・ハッピーな挙動をEVで演出できるかどうかは、制御系のチューニングにかかっており、その点でも注目に値する。

ジャガー「再発明」の文脈を読む
2024年11月、ジャガーは従来のロゴや車名を一新し、「Copy Nothing」をスローガンに掲げた大規模なブランドリニューアルを発表した。その発表動画は車が一切登場しないという前衛的な演出で賛否を呼んだが、Type 00の登場でその方向性が具体化した形だ。
従来のF-PaceやF-Typeといったモデルは販売終了とされ、2026年以降はType 00を含む完全EV専業ブランドとして再出発する計画とみられている。価格帯も大幅に引き上げ、ポルシェ・タイカンやフェラーリ・プロサングエのような「プレミアムEV」市場を狙う戦略と読める。
デザイン面では、従来のジャガーらしさとは一線を画すジオメトリックかつ彫刻的なフォルムが採用されており、好き嫌いが分かれることは間違いない。しかしそれこそがブランドとしての「再発明」の証とも言えるだろう。ロールス・ロイスやベントレーがEV化においても既存ユーザーへのリスペクトを維持したのとは対照的に、ジャガーは既存顧客層すら塗り替える覚悟を示している点が興味深い。

競合比較:ハイパーEV市場での立ち位置
1000馬力超のEVという括りで競合を整理すると、テスラ「Model S Plaid」(約1020馬力)、リマック「ネヴェーラ」(1914馬力)、そしてピニンファリーナ「バッティスタ」(1900馬力)などが名を連ねる。Type 00の1000馬力というスペックはこの中では比較的控えめだが、ジャガーが重視するのは数字よりも「ドライビングエクスペリエンス」の質と考えられる。
リマックやピニンファリーナが超高額・超限定のハイパーカーとして別次元の存在であるのに対し、Type 00は手の届きやすい価格帯での展開を想定しているとみられる。英国メディアの一部報道では20万ポンド(約3800万円)前後という数字も出ており、ポルシェやアストンマーティンと同じ土俵で戦う意図が読み取れる。
CAR magazineが実走レポートを行ったことで、少なくともこの時点でのプロトタイプが十分に走れる状態であることが確認できた。量産モデルとの仕様差がどこまであるかは今後の情報を待つ必要があるが、開発の進捗という意味では好印象だ。

Roadly編集部コメント
正直なところ、ジャガーの「ブランドリセット」発表時には懐疑的な目で見ていたRoadly編集部も、Type 00の実走映像を見てその印象が変わりつつある。1000馬力のEVでドリフトを決める映像には、かつてのXKRやF-Typeが持っていた「ジャガーらしい色気」と通じるものがある。ドライバーの感覚で言えば、現実的な購入候補にはなりにくいが、この1台が切り拓く方向性、トルクベクタリングによる意のままの走り、EV×スポーツカーの融合は近い将来の市販モデルにも影響を与えるはずだ。CAR magazineチャンネルによる実走レポートは、スペック表からはわからない「乗り味の素性」を感じ取るうえで必見の内容となっている。
新生ジャガーの本気を示すType 00。その走りの全貌はCAR magazineチャンネルの映像で確かめてほしい。EV時代のスポーツカーが向かう先が、この1台に凝縮されている。
動画情報
- タイトル:Sideways in Jaguar’s 1000bhp Type 00 tri-motor EV
- チャンネル:CAR magazine
- 動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=chohDoqZ1FM
※本記事は上記の動画を参考に、編集部が独自に構成・執筆しています。