メルセデス・ベンツの電動フラッグシップセダン「EQS」が、2027年モデルに向けて大規模なフェイスリフトを受けることが明らかになった。デザインの大幅刷新にとどまらず、122kWhの巨大バッテリー搭載と800Vアーキテクチャへの移行、そして量産乗用車としては異例のステアバイワイヤ技術の採用まで盛り込まれた今回のアップデートは、「テクノロジーキャリア」として市場に受け入れられにくかったEQSの弱点を正面から塗り替えようとする意欲作だ。ドイツの自動車専門チャンネル「Autogefühl」が現地で詳細なテストレポートを公開しており、内外装から走行フィールまで余すことなく検証している。
この動画のみどころ
- 新世代「Electric Art」フロントデザイン——CLAにも通じる光る星型グリルを採用
- 122kWh(ネット)の大容量バッテリーで高速道路走行でも600km超の航続を実現
- 800Vアーキテクチャ移行により10〜80%充電が最短25分に短縮
- 量産セダン初採用に迫るステアバイワイヤとF1スタイル新型ステアリングホイール
デザイン刷新:ようやくメルセデスらしい顔に
初代EQSが登場した際、その最大の課題はデザインだったと言っても過言ではない。一枚板のような流線型ボディはCd値0.20という驚異的な空力性能をもたらしたが、「どこから見ても同じ形」という印象が強く、特に北米や欧州の保守的なラグジュアリーカー購入層には受け入れられにくかった。
今回のフェイスリフトでは「Electric Art」と名付けられた新しいフロントデザインを採用。全面クローズドのグリル部に無数の小さな星型モチーフを散りばめたイルミネーショングリルは、現行CLAの意匠と共通するもので、メルセデスの最新デザイン言語に統一された。フードトップには新型Sクラス同様に立体スリーポインテッドスターを配置(イルミネーション対応オプションあり)。AMGラインを選択すると中央にラージスターが鎮座する仕様となる。
Autogefühlのトーマスが指摘するように、パワードームのアクセントラインや、ガラスパーティクルを含む特別なスパークリングブラック塗装など、ディテールへのこだわりも増している。全長5,230mmというサイズ感はほぼ変わらず、21インチのエアロダイナミクスホイールや渦巻き状に深みを増したテールランプも新鮮だ。Sクラスに近い威厳のある佇まいに仕上がっており、編集部としてもようやくフラッグシップらしい顔を手に入れたと感じる。

バッテリーと充電性能の大進化
今回の改良でもっとも実用的なインパクトが大きいのが、バッテリーと充電システムの刷新だ。上位モデルには122kWh(ネット)という巨大なバッテリーを搭載。高速道路を現実的な速度で走り続けても600km以上、市街地走行を多く含む混合モードではそれを大きく超える航続距離が期待できる。
注目すべきは下位グレードのバッテリーで、こちらも112kWhへと大幅に拡大されている。Autogefühlが強調しているとおり、「旧世代の大バッテリーが今世代の小バッテリーになった」という表現がそのスケール感を端的に表している。ドイツでのエントリー価格が94,000ユーロを下回る設定となったことで、法人リースや節税対策の観点からも魅力が増したと言える。
さらに大きなアップデートが800Vアーキテクチャへの移行だ。これまでのEQSは400V系だったが、新型CLAなど最新モデルと足並みを揃える形で高電圧化を実現。DCピーク充電出力は最大350kWに達し、10〜80%の充電時間は小バッテリーで25分、大バッテリーでも27分と実用的な水準に達した。また400V対応の充電ステーションでも車載DC-DCコンバーターによってシームレスに充電できる設計は、インフラ過渡期においてユーザーの不便を減らす現実的な配慮だ。フロントにはフランク(前部トランク)はなく、HEPAフィルターがスペースを占有しているが、空気清浄性能との引き換えとして納得できる構成とも言える。

ステアバイワイヤとF1ステアリングの実力
今回の目玉技術が、量産乗用車への採用としては世界最先端レベルとされるステアバイワイヤシステムだ。機械的な接続を持たず、ステアリング入力を電気信号として車輪に伝えるこの技術は、これまでレクサスRZ(一部仕様)など限られたモデルでのみ採用例があった。EQSへの搭載は、メルセデスがこのシステムを旗艦モデルで本格量産展開へ進めることを意味している。
セットで用意されるのがF1マシンをイメージした新型ステアリングホイール。角型のフラットボトム形状で、多数のスイッチ類を集約したコックピット感のあるデザインだ。動画ではAutogefühlが実際の走行シーンでステアリングフィールを詳細にレポートしており、ステアバイワイヤ特有のフィードバック特性や直進安定性、コーナリング時の自然さについて率直な評価を述べている。
EQS580はフロント・リアに各1基のモーターを搭載する4WD構成で、0〜100km/hを4.2秒でこなす。ステアリング系の刷新によりドライビングダイナミクスがどう変化したかは、週末ドライバーにとっても気になる部分だろう。動画のドライビングパートは特に見応えがあり、百聞は一見に如かずの内容となっている。室内はラミネートガラスによる遮音性と上質なアンビエントライト、マットウッドパネルにより、Sクラスに匹敵する静粛性と高級感を備えているという印象だ。

Roadly編集部コメント
Roadly編集部として率直に言えば、初代EQSは「正しいクルマを間違ったタイミングで出した」製品だったと思う。航続距離も静粛性も世界トップレベルだったが、あのデザインと充電性能の限界が市場での評価を難しくした。今回のフェイスリフトはその反省を丁寧に潰した印象で、デザイン刷新・800V化・価格訴求の三点が揃ったことで、特に法人ユーザーや国産高級EV検討層に刺さる一台になりえる。ステアバイワイヤはBMW iXやi7と明確に差別化できる技術的アドバンテージであり、週末に長距離を走るドライバーにとって充電ストレスが劇的に減る点も見逃せない。「欧州フラッグシップEVを現実的な選択肢として検討したい」という方には、まずAutogefühlの動画でフルドライビングレポートを確認することを強くすすめたい。
デザイン・バッテリー・充電・操舵系のすべてを刷新した2027年型EQSは、誤解され続けた電動フラッグシップの真の完成形になる可能性を秘めている。Autogefühlの詳細なテスト動画で、その走りと技術の全貌をぜひ確かめてほしい。
動画情報
- タイトル:Finally the S-Class EV? 2027 Mercedes EQS facelift with steer-by-wire test!
- チャンネル:Autogefühl
- 動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=mwyR2l68vSE
※本記事は上記の動画を参考に、編集部が独自に構成・執筆しています。