スーパーカーの血統を持つSUVという、アストンマーティンの挑戦がまた一歩進んだ。2026年10月1日、アストンマーティンは英国ゲイドンから新型「DBX GT」を正式発表した。先行する高性能仕様のDBX Sとは異なり、DBX GTが追い求めたのは「声高に語らないカリスマ性」。727PSというモンスタースペックを持ちながら、乗り心地・静粛性・クラフトマンシップを徹底的に磨き上げた、新しいカテゴリのラグジュアリーSUVだ。デリバリーは2026年第4四半期を予定している。
この記事のポイント
- 727PS・最大トルク900Nmのビスポーク4リッターV8ツインターボを搭載。0-100km/h加速3.3秒、最高速度310km/hはDBX Sと同等
- シャシー・防音材・シート構造に的を絞った改良。走行中の会話明瞭度を示す指数「Articulation Index」が13%向上
- フロントシートは691メートルの糸と3,297個のパーフォレーションの穴、4時間半を超える手作業で仕上げられる
DBX GTが生まれた理由
アストンマーティンのSUVラインアップでは、これまでパフォーマンス重視のDBX Sが先行してきた。主張の強いデザインで高いスポーツ性能を表現する、という性格づけだ。公式発表によれば、DBX GTはそこに別の価値観を持ち込むために開発された、いわばもう一つの答えだという。なお「世界最強の内燃エンジンSUV」という称号は、DBX GTがDBX Sとともに掲げるものだとリリースには記されている。
CEOのエイドリアン・ホールマーク氏は「スポーティな攻めより確かなエレガンスを好み、格上のラグジュアリーを求めるお客様を念頭に生み出された」とコメントしている。スポーツカーブランドが作るSUVでありながら、その主役はタイムアタックではなく長距離クルーズや日常の洗練にある。DBX Sと並ぶことでラインアップの幅が広がり、ユーザーはスペック重視か上質さ重視かで選択できるようになった。
パフォーマンスを一切犠牲にせずラグジュアリーを積み増すというアプローチは、開発陣にとっても容易ではなかったはずだ。その答えがどこに宿っているのか、各要素を見ていこう。

エクステリア。静かに目を引くデザイン
DBX GTのスタイリングを象徴するのは、新設計の「二重ヴェーンドグリル」だ。「ブライト」と「ダーク」の2種類のフィニッシュが選択でき、分割された金属製のグリルヴェーンは左右の吸気口へと伸びる構造になっている。吸気口がデイタイムランニングライトと水平に一体化することで、フロントマスクに横への広がりと重厚感が生まれた。
側面には時計製造の技術から着想を得たという金属製サイドストレーキを採用。ポリッシュとサテンのコントラストが細部に品格を与えている。ロアフロントバンパー・シル・リアディフューザーはボディカラーと同色となり、全体的なまとまり感を強調する。
ホイールはサテンチタニウムのダイヤモンドターン仕上げの22インチ鍛造品を標準装備し、オプションで23インチも選択できる。タイヤはオールシーズン仕様を標準とすることで、DBX GTが目指す「使いやすさ」を足元から支える設計だ。リアの4本出しエキゾーストフィニッシャーは外面ブライトポリッシュ・内面サテンアノダイズドという二面性の仕上げで、存在感を主張しつつ品を失わない。チーフ・クリエイティブ・オフィサーのマレク・ライヒマン氏が語った「静かなカリスマ性」は、こうした細部の積み重ねによって表現されている。

インテリア。職人技が宿る空間
DBX GTの車内に足を踏み入れると、まずシートのクオリティに圧倒される。公式発表によれば、フロントシートは691メートルもの糸、3,297個のパーフォレーションの穴、そして4時間半を超える手作業によって仕上げられる。ビスポークの刺繍ディテールも加わり、シートがそれ自体で一つの工芸品となっている。
クッション構造には10mmのメモリーフォームを追加し、新設計のサイドサポートが包み込まれるようなホールド感と快適性を両立する。左右のリアシートは高さ調整式ヘッドレストとサイドサポートを備え、5シートの柔軟性はそのまま維持されている。
インテリアの仕立てにはGT限定のモノトーン、デュオトーン、トリトーンの配色が用意され、キルティングやパーフォレーションを施したパネルが空間に奥行きを加える。セミアニリンレザーと毛足の長いフロアマットが触感にまで贅沢を宿し、宝飾品を思わせると評されるアノダイズド金属製のロータリーダイヤルが操作系に品格を添える。パノラミックガラスルーフは標準装備で、開放感も標準仕様として確保されている。

静粛性へのこだわり
「静かな高性能」を実現するうえで、DBX GTが特に力を注いだのが遮音性能だ。ドアパネル・前後ホイールアーチ周辺・荷物スペースには防音材を配置し、リアのサイドガラスには防音合わせガラスを採用している。毛足の長いカーペットも遮音材として機能する設計になっており、走行中の会話明瞭度を示す指数「Articulation Index」が13%向上したというのは、単なるカタログ数値ではなく実際の乗車体験に直結する改善だ。
オーディオシステムにはBowers & Wilkinsを採用。静粛性が高い車内だからこそ、高品質なサウンドシステムの効果がダイレクトに感じられるという相乗効果も期待できる。
一方でエンジンサウンドは消されるわけではない。GTモードでは控えめに抑えられ、SportおよびSport+モードに切り替えると本来のV8サウンドが放たれる仕組みだ。リアマフラー内での排気のダブルミキシング構造によって耳障りな金属音を除去し、クリーンで豊かなサウンドキャラクターを実現しているという。静と動のメリハリを、ドライブモードひとつで切り替えられる点が巧みだ。

727PSエンジンとシャシーの妙
パワートレインはDBX Sと共通のビスポーク4リッターV8ツインターボエンジンを搭載。727PSという出力は、ミッドエンジンのスーパーカーValhallaと共通のターボチャージャー技術によって引き出されている。最高出力727PS、最大トルク900Nmというスペックはそのままに、スロットルペダルの踏み始めのフィールを丁寧に調整することで「軽やか」な立ち上がりを実現した。0-100km/h加速3.3秒・最高速度310km/hという性能値はDBX Sと同等であり、GTという名称からラグジュアリー寄りをイメージしていると意外に感じるほどのポテンシャルだ。9速湿式クラッチオートマチックトランスミッションのシフトフィールも微調整が加えられている。
シャシー面では、ダンパー設定と専用の内部バルブ機構の見直しが核心を担う。独自のバルブシステムが路面の細かな振動時のオイルフローを制御し、不快な突き上げを車内へ伝えにくくする。さらにミッドエンジンスーパーカーValhallaの開発から得た知見をもとに新設計のトランスミッションマウントブッシュを採用。ボディとリアサブフレームをつなぐ2つの前後方向ダンパーも追加され、荒れた路面での安心感が向上した。プレスリリースでCTO・イアン・ホーバン氏は「DBX Sのクラス最高のパフォーマンスとハンドリングを維持しながら、普段使いの快適性と洗練を意味ある形で改善できた」と自信を見せており、スペックを落とさずに乗り味を磨くという難題をクリアした様子がうかがえる。

日本への導入はいつ?
今回の発表はアストンマーティン公式(PR TIMES配信)によるもので、発表地は英国ゲイドン。デリバリー開始は2026年第4四半期を予定していると明言されている一方、プレスリリース内に価格の記載は一切なく、日本導入の時期・日本仕様・日本価格についても現時点では何も示されていない。
アストンマーティンは世界50以上の国で販売網を持つブランドであり、DBXシリーズはウェールズのセント・アサン工場で製造されている。日本市場向けの具体的なアナウンスは今後の続報を待つ必要がある。国内での正式発表があれば改めてお伝えする予定だ。

アストンマーティン DBX GT 主要スペック
| 項目 | DBX GT |
|---|---|
| エンジン | 4リッター ツインターボV8(ビスポーク) |
| 最高出力 | 727PS |
| 最大トルク | 900Nm |
| トランスミッション | 9速オートマチック(湿式クラッチ) |
| 0-100km/h加速 | 3.3秒 |
| 最高速度 | 310km/h |
| ブレーキ | カーボンセラミック(フロント420mm/リア390mm) |
| 標準ホイール | 22インチ鍛造(サテンチタニウム/ダイヤモンドターン仕上げ) |
| 標準タイヤ | ピレリ Scorpion Zero(オールシーズン) |
| オプションの足まわり | 23インチホイール+ピレリ P-Zero(サマー)または Scorpion Zero(オールシーズン) |
| 最小回転直径 | 12m |
| 乗車定員 | 5名 |
| 静粛性 | 走行中の会話明瞭度を示す指数「Articulation Index」が13%向上 |
| デリバリー開始 | 2026年第4四半期(予定) |
| 価格 | 未発表 |
| 日本導入 | 未発表 |
※2026年10月1日のアストンマーティン公式プレスリリース(英国ゲイドン発)に記載された数値のみを掲載しています。同リリースに価格・日本導入に関する記載はありません。加速性能はリリース原文が「0-100km加速」表記のため、本記事では一般的な「0-100km/h加速」に統一しています。ボディサイズ・車両重量・燃費など、リリースに記載のない項目は掲載していません。
Roadly編集部コメント
DBX GTが興味深いのは、スペックシートだけ見るとDBX Sとほぼ変わらないにもかかわらず、まったく別の車に仕上げてきた点だ。同じ727PSエンジンを積みながら、シャシー・防音・シート・デザイン言語のすべてで「どう感じさせるか」を作り直している。ロールス・ロイスやベントレーのSUVが「極上の移動空間」を売りにするなか、アストンマーティンは「運動性能も同時に保証する」という差別化を明確に打ち出した。乗り心地の良さとスポーツ性能の両立を求めるドライバー、あるいはDBX Sは少しやんちゃ過ぎると感じていた人にとって、このDBX GTはかなり刺さる選択肢になりそうだ。日本価格の発表が待ち遠しい。
「静かな贅沢と本物のパフォーマンス」をひとつに収めたDBX GT。価格や日本仕様など未公開の情報はまだ多く残されているが、その方向性は既に明確だ。続報が入り次第、Roadlyでも随時お伝えしていく。
情報源・出典
- 情報源:アストンマーティン 公式(PR TIMES配信)(日本)
- プレスリリースタイトル:ASTON MARTIN DBX GT 格上の洗練、軽やかなパフォーマンス
- プレスリリースURL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000187.000121164.html
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。