アウディ ジャパンは2026年9月29日、新型「Audi RS 5」および「Audi RS 5 Avant」の国内導入を正式に発表した。最大の注目点は、Audi Sport GmbH が手がけるRSモデルとして史上初めてプラグインハイブリッドシステムを採用した点だ。ツインターボ2.9リッターV6とモーターを組み合わせたシステム出力は639PSに達し、0-100km/h加速はわずか3.6秒。さらに市販モデルとして世界初となるエレクトロメカニカルトルクベクタリングを後輪に搭載するなど、走行技術面でも新しい章を開く1台となっている。受注は発表と同日に開始され、2026年10月20日から全国のアウディ正規ディーラーで購入可能になる。
この記事のポイント
- Audi Sport史上初のPHEVモデルとして、639PS/825Nmというシステムスペックを実現
- 市販車世界初のエレクトロメカニカルトルクベクタリングを搭載し、予測型アクティブ制御へ進化
- EV走行距離は最長85km(RS 5)を確保しつつ、最高速度285km/h(オプション時)を両立
Audi Sport初のPHEVとは何か
アウディのハイパフォーマンス部門「Audi Sport GmbH」は、1994年に初のRSモデル「RS 2 Avant」を世に送り出して以来、ル・マン24時間やDTMで磨いた技術をロードカーへ落とし込んできた。そのRSシリーズが初めてプラグインハイブリッド(PHEV)という選択肢を取り入れたのが、今回の新型RS 5だ。
パワートレインの核となるのは、VTG(可変ジオメトリータービン)を採用した改良版2.9リッターツインターボV型6気筒エンジン。単体で最高出力510PS・最大トルク600Nmを発生し、そこにトランスミッション前段に配置した177PS/460Nmの高出力モーターを組み合わせることで、システム合計639PS・825Nmという数値をたたき出す。0-100km/h加速3.6秒、オプション装着時の最高速度285km/hという数字は、スーパーカー的な領域だ。
一方でバッテリー容量は総電力量25.9kWh(ネット値22kWh)を確保しており、EV走行換算距離はRS 5で最長85km、RS 5 Avantで83kmを実現している。市街地での日常使いや通勤ルートの多くをEVモードでこなせる実用性は、従来のRS系モデルにはなかった新しい価値軸だ。なお充電は普通充電のみの対応となっており、標準付属の3kWケーブルのほか、別売のe-tron Charging Kit Plus(8kW充電器)を使えば最大8kWでの充電も可能になる。

世界初技術:トルクベクタリングの革新
新型RS 5が搭載する走行デバイスの中でも、特に注目したいのが「ダイナミックトルクコントロール quattro」と名付けられたリヤ用エレクトロメカニカルトルクベクタリングだ。アウディの公式発表によれば、このシステムは市販モデルとして世界初の採用となる。
従来のアウディスポーツディファレンシャルは、車輪がスリップを始めてから制御に介入する、いわば「事後対応型」のシステムだった。これに対して新システムは、ステアリング角・アクセル開度・ブレーキ圧といったドライバーのインプットに加え、縦横のGフォース・ヨーレート・スリップ角・速度・路面の推定摩擦係数をリアルタイムで統合解析し、スリップが発生する前に先手を打つ「予測型アクティブ制御」へと進化している。
具体的には400V水冷式永久磁石モーター(出力8kW・40Nm)をアクチュエーターとして使用し、後輪左右のトルク差を最大2,000Nmのレンジで瞬時に生成。反応速度はわずか15ミリ秒で、人間の瞬きの約10分の1という超高速制御を実現する。制御演算はドライビングダイナミクスコントローラー(HCP1)が担い、ターゲットとなるトルク差を200Hz(5ミリ秒ごと)の頻度で算出し続ける。
また「プリロード付センターディファレンシャル」もAudi Sportとして初採用。駆動トルクがかかっていない状況でも前後アクスルの結合を維持し、コーナリング中にアクセルを抜いた際のアンダーステアを抑制してターンインをサポートするという。これら二つのシステムが協調して動くことで、PHEVという重いバッテリーを抱えながらも鋭いハンドリングを実現することを目指している。

サスペンション・ブレーキの進化
足回りの刷新も見逃せない。従来採用されていたDRCサスペンションに代わり、新たに「RSスポーツサスペンション」を標準装備する。ツインバルブ式ショックアブソーバーを採用し、縮み側だけでなく伸び側の減衰力も電子制御でコントロールすることにより、ピッチとロールを効果的に抑える設計だ。高速域での安定感と日常域での快適性を両立させる方向性は、PHEVという性格とも合致している。
ブレーキに関しては、このセグメントのアウディモデルとして初めてリヤにもセラミックディスクブレーキをオプション設定した。ただしオプションの21インチホイールとのセット選択が必須となる点は注意が必要だ。フロントだけでなくリヤにもセラミックを奢ることで、システム出力639PSと最大トルク825Nmに見合う制動力を確保する狙いがある。

ワイドボディが語るデザイン思想
スタイリングは、アウディの伝説的な競技車両「Ur-quattro(初代quattro)」「Audi Sport quattro S1」、そして「Audi S1 e-tron quattro Hoonitron」といったヘリテージモデルへのオマージュを随所に盛り込んでいる。
ベースとなるA5から前後左右それぞれ45mmずつ拡幅されたワイドボディは一目でRS 5と識別できるシルエットを形成し、サイドビューでは大きく張り出したブリスターフェンダーが迫力を演出する。フロントはダークトーンのマスクがエアカーテンと一体的につながり、立体的なハニカム構造のシングルフレームグリルを引き立てる。フロントフェンダー後方のエアベントや、リヤに配置された垂直フィン付きディフューザーは機能とデザインを兼ねた処理だ。
リヤエンドには中央に縦型の赤色リフレクター、左右に振り分けられたダーククロームのオーバルテールパイプが配置される。テールパイプはドライビングモードに連動してサウンドが変化するアクティブな仕掛けを持つ。ダークハウジングのマトリクスLEDヘッドライトも含め、全体として「速さを隠さない正直なデザイン」という方向性が貫かれている。

コックピットの質感と機能性
インテリアは、スポーツカーとしての高揚感と日常的な快適性の両立を意識した作りだ。ハニカムキルティングを施したSスポーツシートは強い横サポートを確保しながらも、電動調整機能とマッサージ機能を備え、長距離移動でも疲れにくい設計となっている。
標準仕様として注目したいのが「レザーフリー」方針だ。布・再生ポリエステルから作られたカスケードクロスやマイクロファイバーのダイナミカをシートのみならず、インストルメントパネル・アームレスト・ドアトリムにまで広く使用している。動物由来素材を使わずに高品質なインテリアを成立させようという、近年のアウディの明確な方向転換を示している。
オプションのRSデザインパッケージを選べば、コントラストステッチ入りのファインナッパレザー仕様に変更でき、ヘッドレストスピーカーやシートベンチレーション・マッサージ機能もセットになる。カラーはレッド、レッドプラス、グレー、サーペンタイングリーンから選択可能だ。
操作系では、フラットトップ/フラットボトム形状のRSステアリングホイールにRSサテライトコントロールを内蔵し、走行中でもドライブモード切り替えやブースト機能を手元で完結させられる。11.9インチのバーチャルコックピットプラスにはシフトライトやGフォース・ラップタイムの表示機能も備わり、サーキット走行にも対応した情報密度を持つ。

価格・発売日・購入時の注意点
アウディ ジャパンが発表した国内価格(消費税込・メーカー希望小売価格)は、Audi RS 5が1,550万円、ステーションワゴンのAudi RS 5 Avantが1,575万円。仕様はいずれも右ハンドル、8速ティプトロニック、quattro(四輪駆動)が標準となる。
受注は2026年9月29日にスタートしており、発売は2026年10月20日。全国127店舗(現時点)のアウディ正規ディーラーで取り扱う。
購入を検討する際にいくつか押さえておきたいポイントがある。まず充電は普通充電のみの対応となっている。自宅に普通充電設備がある環境であれば恩恵を受けやすい一方、外出先での継ぎ足しは想定しにくい。また、最高速度285km/hはオプション装着時の数値であり、標準は270km/hのリミッターが設定されている。リヤセラミックブレーキは21インチホイールとのセット選択が必須である点も確認しておきたい。

Audi RS 5/RS 5 Avant 主要諸元
| 項目 | Audi RS 5 | Audi RS 5 Avant |
|---|---|---|
| 希望小売価格(税込) | 15,500,000円 | 15,750,000円 |
| パワートレイン | 2.9L V6 TFSI ツインターボ(VTG)+モーター | |
| システム最高出力/最大トルク | 470kW(639PS)/825Nm | |
| エンジン単体 | 375kW(510PS)/600Nm | |
| モーター | 130kW(177PS)/460Nm(トランスミッション手前に搭載) | |
| 0-100km/h 加速 | 3.6秒 | |
| 最高速度 | 285km/h(オプション装着時)/標準は270km/hリミッター | |
| バッテリー総電力量 | 25.9kWh(ネット値22kWh) | |
| EV走行換算距離 | 最長 85km | 83km |
| EVモード最高速度 | 140km/h | |
| 充電 | 普通充電のみ。標準3kWケーブル/別売 e-tron Charging Kit Plus で最大8kW(理論値) | |
| トランスミッション/駆動 | 8速ティプトロニック/quattro(四輪駆動) | |
| ステアリング | 右 | |
| 受注開始/発売 | 2026年9月29日/2026年10月20日 | |
価格は消費税込のメーカー希望小売価格です。リヤのセラミックディスクブレーキはオプションで、21インチホイールとの同時選択が必須です。
Roadly編集部コメント
「RS×PHEV」という組み合わせに対して、純粋主義的な車好きからは「重くなるのでは」という懸念の声も聞こえてくる。ただ、バッテリー搭載による重量増をトルクベクタリングで相殺しようというアプローチは理にかなっており、特に「ダイナミックトルクコントロール quattro」のアクセルオフ状態でも能動的にトルクを生成するという設計思想は、従来のAWDシステムとは一線を画す。ステーションワゴンのRS 5 Avantは、ファミリーユースとスポーツ性を両立させたい層には強く刺さる選択肢だ。1,575万円という価格は決して安くはないが、EVモードで85km走れるRSという一台は、いまのところ他に見当たらない。
Audi Sport初のPHEVという歴史的な転換点に立つRS 5は、純粋な速さだけでなく、日常利用の現実解も求めるドライバーにとって説得力のある1台だ。国内での走りのインプレッションや長期使用レポートにも引き続き注目したい。
情報源・出典
- 情報源:Audi 公式(日本)
- プレスリリースタイトル:新型 Audi RS 5 / RS 5 Avantを発表:スポーティさと日常の快適性を高次元で両立したハイパフォーマンスなプラグインハイブリッド
- プレスリリースURL:https://www.audi-press.jp/press-releases/2026/l7h95100000016fg.html
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。