2026年7月3日、フェラーリはマラネッロから世界に向けて驚きのモデルを発表した。「Ferrari 12Cilindri Manuale(フェラーリ・12チリンドリ・マニュアーレ)」、世界限定1,499台のスペシャル・シリーズだ。現代のDCTが当たり前となったフェラーリのラインナップにおいて、このモデルはクラッチペダルとシフトレバーによる操作を復活させるという大胆な選択をした。ただし単純な「MTへの回帰」ではない。フェラーリ自社開発の「Manuale・バイ・ワイヤ・システム」という、まったく新しいアプローチでドライビングの純粋な喜びを追求した意欲作である。
この記事のポイント
- 世界限定1,499台:フェラーリ初の12気筒エンジン排気量(1947年)にちなんだ台数
- クラッチペダル+シフトレバーを自社開発のバイ・ワイヤ技術で実現、パドルシフトは廃止
- 6.5リッター自然吸気V12・830cv、0-100km/h 2.9秒のパフォーマンスはベースモデルと同水準
限定台数「1,499」に込められた意味
フェラーリ公式の発表によれば、生産台数1,499台という数字は単なる希少性の演出ではない。1947年にフェラーリが初めて世界に送り出した12気筒エンジンの排気量にちなむ。フェラーリの原点である初代V12の排気量と台数を重ね合わせた数字だ。ブランドの原点を台数に刻み込むという、フェラーリらしい詩的なアプローチだ。
ベースとなる「Ferrari 12Cilindri」自体、1950〜60年代の偉大なグランツーリスモへのオマージュとして誕生したモデルである。フロント・ミッドシップに6.5リッター自然吸気V12を搭載し、エレガンスとパフォーマンスの両立を掲げる2シーター。その頂点に立つスペシャル・シリーズとして「マニュアーレ」は位置づけられている。
1,499台すべてはテーラーメイドのパーソナライズ・プログラムに対応し、ローンチカラーのロッソ・ルビーノを筆頭に25種類のフェラーリ伝統カラーから選択可能。シートもComfortとRacingの2種類が用意される。所有者それぞれが唯一の1台を仕立て上げられる設計だ。

「Manuale バイ・ワイヤ」とは何か
このモデルの核心は、フェラーリがマラネッロで独自に設計・開発した「Manuale・バイ・ワイヤ・システム」にある。わかりやすく言えば、フェラーリの高評価な8速DCTをベースにしながら、クラッチペダルとシフトレバーによる本物のマニュアル操作感を実現する仕組みだ。エンジンとトランスミッション本体に手を加えるのではなく、専用アーキテクチャーと新設計のコンポーネントを加えることで実現している点が技術的な妙味といえる。
ドライバーがシフトレバーを操作する際の感触は、各軸1個・計2個のホール効果角度センサーがインプットを検出し、プッシュ・プル両用のソレノイドが物理的フィードバックを生み出す。メカニカル・モジュールはソリッドブロックからの削り出しで重量3.5kg未満。フェラーリ公式の説明では、回転数の同期からギア締結・解放までの操作荷重やクリック感が、本物のマニュアル・ギアボックスと同様に再現されているとしている。
重要なのは、本物のマニュアルと同様の「失敗できる」設計であることだ。クラッチが踏まれていない状態や不適切なギア選択ではシステムが機械的に締結を妨げ、回転を合わせられなければギアが入りにくい。ガクンという衝撃やエンジンストールも起こり得るとフェラーリは公式に述べており、ドライバーのスキルが如実に問われる。6速プラスリバースのマニュアル・モードのほか、オートマチック・モードも選択可能なため、日常ユースにも対応している。

パドルシフト廃止という大胆な決断
このモデルでフェラーリが下した決断の中でも、特に象徴的なのがステアリングのパドルシフト廃止だ。フェラーリは長年、パドルシフトをドライビング体験の核に置いてきた。それを取り除き、シフトレバーとクラッチペダルを操作の中心に据えた判断は、現代のスーパーカーの文法を意図的に外れるものである。
この設計判断の背景には、搭載エンジンの特性も深く関係している。6.5リッター自然吸気V12は最高回転数9,500rpmまで回り続け、その広大な回転域が変速ごとのドラマを際立たせる。最高出力830cv(オクタン価98使用時・ダイナミック・オーバーブースト5cvを含む)、最大トルク678Nm(7,250rpm)というスペックを持ちながら、その力をドライバーが自らの手と足で扱うことをフェラーリは求めている。
シフトノブは丸型アルミ製でホワイト/アンバーのLEDバックライトを内蔵。シフトゲートは左上にリバースを置く6速パターンを再現し、リバースはシフトレバーを下に押し込む操作で選択する。ヒール・アンド・トウのようなアイコニックなドライビングテクニックも可能とされている。

デザインに刻まれた「伝統」
外観デザインはフラヴィオ・マンゾーニ率いるフェラーリ・デザイン・スタジオが手がけた。スペシャル・シリーズとしての特別感は随所に散りばめられている。
フロント・スプリッターとリア・ウィングには、往年の名作「Ferrari 365 GTB/4(いわゆるデイトナ)」へのオマージュとなるピンストライプが走る。スクーデリア・フェラーリのエンブレムには貴金属コインと同様の技術によるエンボス加工が施され、サイド・バッジのロゴはレーザーエッチング仕上げ。5スポーク鍛造ホイールは4種類の仕上げから選べる。
インテリアでは、シートのトリムに6速ギアにちなんだ6本の縦グルーブが入るなど、マニュアーレというモデルのアイデンティティが細部にまで行き渡っている。モデルロゴ入りのアルミ製ドアシルが出迎える空間は、乗り込むたびに特別感を意識させる設計だ。
実用面では、初回登録から7年間の純正メンテナンスプログラムが適用される。限定モデルとしての希少価値を長期にわたって維持するための体制も整えられている。

主要スペック:数字で見る実力
フェラーリ公式が公表した技術諸元をまとめると、パフォーマンス面での凄みが数字からも伝わってくる。
【パワートレイン】
エンジンは65°V12・ドライサンプ式、総排気量6,496cc。ボア×ストロークは94mm×78mmで、圧縮比13.5:1。最高出力830cv(9,250rpm)、最大トルク678Nm(7,250rpm)、最高回転数9,500rpm。比出力は128cv/Lに達する。
【サイズ・重量】
全長4,733mm×全幅2,176mm×全高1,292mm、ホイールベース2,700mm。乾燥重量1,565kg(追加オプション装備車)、乾燥パワー・ウェイト・レシオ1.88kg/cv。重量配分はフロント48.4%・リア51.6%とほぼ均等に近い。
【パフォーマンス】
最高速度340km/h超、0-100km/h加速2.9秒、0-200km/h加速7.9秒未満。制動距離は100-0km/hで31.4m、200-0km/hで122.0m。
【タイヤ】
フロント275/35 R21・リア315/35 R21という幅広のセッティング。トランスミッションは8速F1デュアル・クラッチをベースにManuale・バイ・ワイヤ・コントロールを統合する。燃費はWLTC複合サイクルで15.5L/100km、CO2排出量353g/kmとなっている。

日本市場への導入は?
フェラーリ公式の発表時点では、日本での取り扱い時期・国内価格はいずれも未発表となっている。世界限定1,499台という生産規模を考えると、日本への割り当てがどの程度になるかも現時点では不明だ。
フェラーリのスペシャル・シリーズは通常、既存オーナーや長年のフェラーリ・クライアントを中心に案内が行われることが多い。価格についても公式からの言及はなく、現段階でコメントできる情報はない。続報はフェラーリ日本公式からの発表を待つ必要がある。
確認できていること、できていないことを整理すると、確認済みは「世界限定1,499台」「発表日2026年7月3日」「技術諸元(上記スペック)」「7年間メンテナンスプログラム」「テーラーメイド・プログラムの存在」。未発表・未確認は「日本導入時期」「国内価格」「日本への割り当て台数」となる。

Ferrari 12Cilindri Manuale 技術諸元
| 項目 | スペック |
|---|---|
| エンジン | V12・65°・ドライサンプ式 |
| 総排気量 | 6,496cm³ |
| ボア×ストローク | 94mm×78mm |
| 最高出力 | 830cv/9,250rpm |
| 最大トルク | 678Nm/7,250rpm |
| 最高回転数 | 9,500rpm |
| 圧縮比 | 13.5:1 |
| 比出力 | 128cv/L |
| トランスミッション | 8速F1デュアル・クラッチ(Manuale・バイ・ワイヤ・コントロール付き) |
| 全長×全幅×全高 | 4,733×2,176×1,292mm |
| ホイールベース | 2,700mm |
| トレッド(前/後) | 1,686mm/1,645mm |
| 乾燥重量 | 1,565kg(追加オプション装備車) |
| 乾燥パワー・ウェイト・レシオ | 1.88kg/cv |
| 重量配分(前/後) | 48.4%/51.6% |
| 燃料タンク/トランク容量 | 92L/270L |
| タイヤ(前/後) | 275/35 R21 J10.0/315/35 R21 J11.5 |
| ブレーキ(前/後) | 398×223×38mm/360×233×32mm |
| 最高速度 | 340km/h超 |
| 0-100km/h加速 | 2.9秒 |
| 0-200km/h加速 | 7.9秒未満 |
| 制動距離 | 100-0km/h:31.4m/200-0km/h:122.0m |
| 燃料消費量(WLTC複合) | 15.5L/100km |
| CO2排出量(WLTC複合) | 353g/km |
| 生産台数 | 世界限定1,499台 |
※最高出力はオクタン価98使用時、5cvのダイナミック・オーバーブーストを含む。乾燥重量は追加オプション装備車の値。燃費・CO2はWLTC複合サイクル。cvはメートル法馬力(ほぼPSに相当)。価格および日本での取り扱い・国内価格は未発表で、数値は公式技術諸元に基づきます。
Roadly編集部コメント
Roadly編集部として率直に言えば、このモデルの登場は想定外だった。フェラーリはここ数年、電動化・ハイブリッド化という方向に着実に歩みを進めてきた。その中で「クラッチペダルとシフトレバーを復活させる」という逆張りの選択は、ある意味でブランドの自信の表れだろう。DCTの速さや効率を捨てたのではなく、そのベースを活かしながら「操る感覚」を技術で作り込む手法は、他メーカーには容易に真似できないフェラーリならではのアプローチだ。V12自然吸気×9,500rpm×クラッチペダルという組み合わせに心を動かされるドライバーにとって、1,499台という数字は厳しい現実かもしれないが、それもまたフェラーリの物語の一部である。
世界1,499台限定の「Ferrari 12Cilindri Manuale」は、現代技術と伝統的なドライビング体験を融合させた意欲作だ。日本への導入詳細はまだ明かされていないが、続報が入り次第お伝えする。
情報源・出典
- 情報源:Ferrari 公式(日本)
- プレスリリースタイトル:FERRARI 12CILINDRI MANUALE ドライビングの最も純粋な形
- プレスリリースURL:https://www.ferrari.com/en-EN/corporate/articles/ferrari-12cilindri-manuale
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。