2026年6月、マセラティは「トライデント」ロゴ誕生100周年という節目に、グラントゥーリズモ、グランカブリオ、グレカーレの3モデルを一斉にアップデートした。V6ネットゥーノエンジンは最高出力590馬力まで引き上げられ、SUVのグレカーレへも新たに390馬力仕様が追加。さらに電動グレードのフォルゴーレも航続距離を伸ばし、パフォーマンスと実用性の両面で進化を遂げている。イタリア製グランツーリズモの最新形を、Roadly編集部が詳しく解説する。
この記事のポイント
- V6ネットゥーノが590馬力に強化。グラントゥーリズモ/グランカブリオ・トロフェオで最高速度320km/h超を実現
- グレカーレに390馬力V6ネットゥーノが初搭載。2リッターエンジン比でトルクが低回転域で32%向上
- グラントゥーリズモ・フォルゴーレは800Vシステムで航続540km超。グランカブリオ・フォルゴーレはセグメント初のフル電動カブリオレ
100周年に重なる3モデル同時進化
マセラティが今回のアップデートを発表したのは、単なるマイナーチェンジのタイミングではない。1926年のタルガ・フローリオでアルフィエーリ・マセラティがタイプ26を駆って初勝利を飾ってから100年、そのレースで初めて使われた「トライデント」ロゴの誕生100周年という歴史的な節目に重ねた発表だ。
マセラティのCOOを兼任するアルファ ロメオCEOのサント・フィチリ氏は「デザイン、エレガンス、パフォーマンス、職人の技が一体となったイタリアン・グランツーリズモの本質を、新しいトライデントレンジで一層強固なものにする。過去112年以上にわたって築いてきた現代のラグジュアリーの解釈を、これからも独自の形で続けていく」とコメントしている。
3モデルはいずれもイタリア国内(モデナとカッシーノ)で開発・生産される。デザイン言語はサーキット専用車MCXトレーマを出発点とし、GT2ストラダーレ、MCPURAを経て熟成されたラインを踏襲。最新の「シャークノーズ」フロントフェイスとCFD(数値流体力学)で最適化されたエアロダイナミクスが共通の血統を示している。

新型グラントゥーリズモ、590馬力の実力
グラントゥーリズモ(クーペ)とグランカブリオ(オープン)のラインアップは3グレード構成となった。
「490馬力」グレードはフルグレインレザーと木目パネルを組み合わせたラグジュアリー仕様。「590馬力トロフェオ」は鍛造ペガソホイール、カーボンファイバーエクステリア、アルカンターラヘッドライナー、電子式LSD、スポーツエキゾーストを標準装備し、専用バンパーとディフューザーで空力性能も高めている。前世代から40馬力のパワーアップを果たした3.0リッター・ツインターボV6ネットゥーノは、F1由来のMTC(マセラティ特許)プレチャンバー燃焼技術を採用し、トルクは650Nmを発生。グラントゥーリズモ・トロフェオは最高速度320km/h超を公式発表している。
フロントエンドは完全に刷新され、境界層スロットを持つ再形成されたエアインテーク、CFD開発のエアカーテン、中央スプリッターを採用して前輪へのダウンフォースを増加。リアにはクリアレンズのテールライトが奢られ、視覚的にもシャープさを増した。
インテリアではレーシングインスパイアドのステアリングホイール(フラット上下断面、ダークサテンアルミスポーク)や、モード変更時にポップアップする八角形デジタルクロック、12.3インチ中央ディスプレイ、8.8インチコンフォートディスプレイ、カスタマイズ可能な12.2インチメータークラスターが新設計で登場。ドライバーの注意散漫・疲労を検知するモニタリングシステムも新たに搭載された。

グラントゥーリズモ・フォルゴーレの実力
電動グレードであるフォルゴーレは、800Vシステムに3モーター(フロント1基+リア独立2基)を組み合わせて760馬力をホイールに伝達する。インストール済み出力は1,200馬力超だが、走行用として供給されるのは760馬力という設計だ。
最大の特徴は「Tボーン形状」の92.5kWhバッテリーで、これにより全高はわずか1,353mmに抑えられており、電動車のなかで最低レベルの車高を実現している。フロントハーフシャフトを物理的に切り離すAWDディスコネクト機能は500ms以内で後輪駆動へ移行でき、航続距離の延長にも貢献。新しいエネルギー管理システムとの組み合わせで540km超の航続距離を公式発表している。
グランカブリオ・フォルゴーレは290km/hに達するセグメント初のフル電動カブリオレとして登場。「市販電動カブリオレ最速」という称号をマセラティが主張する形だ。
コルサモードでは3モーターによるトルクベクタリングとパフォーマンスオプティマイザーが連携し、最大10%の出力向上を実現。ランチコントロールはスポートとコルサモードで使用可能となっている。

新型グレカーレ、待望のV6ネットゥーノ搭載
2022年発表・2023年市販開始のラグジュアリーDセグメントSUV「グレカーレ」も今回の刷新対象に含まれた。最大のニュースは390馬力V6ネットゥーノの初搭載で、2リッターエンジンと比較して2,000rpm時のトルクが32%向上するという。グレカーレV6とモデナV6の2グレードに設定される。
トップグレード「トロフェオV6」は530馬力を発揮し、0-100km/h加速3.8秒、最高速285km/hを公式発表している。エントリーグレードには250馬力・300馬力・330馬力の4気筒マイルドハイブリッドも継続設定される。
電動グレードのグレカーレ・フォルゴーレは最大航続距離580kmを維持しつつ、空力改善・新エネルギー管理アルゴリズム・低転がり抵抗タイヤの採用によって20インチホイールで9km、21インチホイールで最大53kmの航続延長を達成。新採用の「AGS(エアグリルシャッター)」システムも燃費改善に貢献する。
デザイン面ではMCPURA譲りの「シャークノーズ」フロントフェイスを採用し、新形状のバンパーとグリルでワイド&ローな印象を強調。インテリアは八角形ステアリングホイール(6時位置スポーク、有孔レザーまたはアルカンターラ)、静電容量式ハプティック技術を採用した新PRNDセレクター、ミネラルクリスタルダイヤル付きデジタルクロックなど全ドライバーコンタクトポイントを刷新している。EISAアワード受賞のSonus faber製21スピーカー・1,285Wオーディオシステムも継続搭載される。

カスタマイズ&カラーの充実
マセラティのパーソナライズプログラム「BOTTEGAFUORISERIE」が今回さらに拡張された。グラントゥーリズモ/グランカブリオでは初めてファブリックソフトトップもビスポークカスタマイズの対象となり、コルセ・フトゥーラ・ウニカの3コレクションからカタログ、ビスポークの2レベルで選択できる。
新規エクステリアカラーはグリーン・ジュピター・マット、ブルー・デニム、ブロンゾ・ルチド/マット、グリージョ・ミステーロ、ロッソ・ベッルート、オロ・リリコの6色をフオーリセリエに追加。カラーバッジ、ラドーム、エキゾーストチップへの色指定も可能になった。グレカーレには新色「グリージョ・ラミエーラ・シャイニー」が設定される。
また、マセラティは21:9ワイドスクリーン対応のフォトリアリスティックWebコンフィギュレーターを同時リリース。購入前のバーチャルカスタマイズ体験がより精緻になった点も、購入を検討するドライバーにとって実用的なアップデートといえる。

主要パワートレイン早見表
プレスリリースで公表された各モデルのパワートレイン構成を整理した(欧州仕様)。グラントゥーリズモ/グランカブリオは共通、グレカーレは内燃・ハイブリッド・電動を揃える。
グラントゥーリズモ/グランカブリオ
| グレード | パワートレイン | 最高出力・主な性能 |
|---|---|---|
| 490(標準) | 3.0L V6ネットゥーノ ツインターボ | 490馬力/AWD・エアサス標準 |
| トロフェオ | 3.0L V6ネットゥーノ(+40馬力) | 590馬力/650Nm/最高320km/h超 |
| フォルゴーレ(EV) | 800V・3モーター・92.5kWh | 760馬力/航続540km超/最高325km/h(カブリオは290km/h) |
グレカーレ
| グレード | パワートレイン | 最高出力・主な性能 |
|---|---|---|
| グレカーレ/モデナ | 2.0L 直4 マイルドハイブリッド | 250・300馬力(モデナは330馬力) |
| グレカーレV6/モデナV6 | 3.0L V6ネットゥーノ(新搭載) | 390馬力(2.0L比 低回転トルク+32%) |
| トロフェオV6 | V6ターボ(比出力177馬力/L) | 530馬力/0-100km/h 3.8秒/最高285km/h |
| フォルゴーレ(EV) | 400V フル電動 | 550馬力/航続最大580km |
※欧州仕様の発表値。価格・日本導入時期は本稿執筆時点で未発表。フォルゴーレ=フル電動グレード。
Roadly編集部コメント
今回の発表で印象的なのは、マセラティがEVと内燃機関を対立軸としてではなく、「グランツーリズモという体験」の延長線上に両立させている点だ。グラントゥーリズモ・フォルゴーレの540km超航続距離、グランカブリオ・フォルゴーレの「最速電動カブリオレ」という打ち出し方は、EVをあくまでパフォーマンスの文脈で語る姿勢を示している。グレカーレへのV6ネットゥーノ搭載も「SUVにスポーツカーのDNAを持ち込む」というアプローチで一貫している。ポルシェ・マカンやBMW X3といった強豪が揃うDセグメントSUV市場でV6+390馬力という設定は、十分な訴求力を持つはずだ。ロングドライブで本物のパフォーマンスを味わいたいドライバーにとって、注目度の高い一台群といえる。
マセラティ100周年を象徴する3モデルの進化は、エンジン・電動・デザインの全方位で確かな前進を示している。日本導入の時期や価格についての続報に注目したい。
情報源・出典
- 情報源:Maserati 公式(欧州)
- プレスリリースタイトル:New Maserati GranTurismo, GranCabrio and Grecale
- プレスリリースURL:https://www.media.stellantis.com/em-en/maserati/press/new-maserati-granturismo-grancabrio-and-grecale
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。