電動化の波が押し寄せる中、メルセデスAMGが「V8は終わらない」と宣言した。2026年6月16日、AMG本拠地アファルターバッハからプレスリリースが発行され、大幅刷新を受けた新型「メルセデスAMG GLE 63 S 4MATIC+」および「メルセデスAMG GLS 63 4MATIC+」が正式に発表された。核心は新世代エンジン「AMG M177 EVO」。フラットプレーンクランクシャフトや最新排気後処理システムを採用しながら、612馬力・850Nmという強烈なスペックを維持。さらにマイルドハイブリッド技術を組み合わせることで、環境規制への対応と痛快な加速を両立させている。SUVの頂点に立つ二台の全貌を、Roadly編集部が詳しく解説する。
この記事のポイント
- 新世代「AMG M177 EVO」V8ビターボは612馬力+マイルドハイブリッドで850Nmを発生
- GLE 63 Sは0-100km/h 3.9秒、GLS 63は4.2秒というSUV最高水準の加速性能
- フラットプレーンクランクシャフト採用でレスポンスと高回転特性を大幅改善
V8を「未来対応」に刷新した新エンジン
今回の最大の見どころは、エンジンそのものの進化にある。新型に搭載されるAMG M177 EVOは、排気量3,982ccの4.0リッターV8ビターボ。最高出力450kW(612馬力)、最大トルク850Nmというスペックは先代と同水準だが、内部は抜本的に作り直されている。
特に注目すべき変更点はフラットプレーンクランクシャフトの採用だ。従来のクロスプレーン式に比べて回転質量が低減され、エンジンの吹け上がりが鋭くなる。レスポンスの良さと高回転域での伸びやかさは、AMGのV8が長年にわたって磨き続けてきた特性をさらに研ぎ澄ましたものといえる。
このほか、インジェクションシステムの最適化、吸排気ポートの新設計、インテークカムシャフトの改良、コンプレッサーホイールとターボハウジングの見直しなども実施。世界各地で厳しくなる排出ガス規制に対応するため、微粒子フィルターが全世界向けに標準装備されている。メルセデスAMGのボード・オブ・マネジメントメンバーであるミヒャエル・シーべ氏は「V8はAMGのパフォーマンスDNAの中心。新世代M177 EVOは、より高い出力と効率性を実現しながら世界の法規制にも適合した」とコメントしている。
エンジンはアファルターバッハのマイスターが1基ずつ手作業で組み上げる「ワン・マン・ワン・エンジン」哲学を踏襲。量産車でありながら、職人仕事の矜持が受け継がれている点もAMGの魅力だろう。

マイルドハイブリッドが担う「即応性」
V8の迫力を支える縁の下の力持ちが、48Vマイルドハイブリッドシステムだ。統合スタータージェネレーター(ISG)2.0が追加の17kW(23馬力)と205Nmのトルクを供給する。
ISGの役割は単なる「補助」ではない。低回転域でのトルク補填、減速時のエネルギー回生、そしてエンジン再始動時の滑らかさが主な担当領域。特に低回転からの力強い発進感と、アクセルを踏んだ瞬間の「溜めのなさ」に貢献する。EV全盛時代に求められる「瞬時の応答性」を、ターボエンジンの弱点でもあるターボラグ解消という形で実現している点が巧みだ。
結果として生まれる加速性能は、GLE 63 Sが0-100km/h 3.9秒、GLS 63が4.2秒。最高速度は電子制御リミッター付きで280km/h。3列シートを備えた大型SUVが4秒台を切るというのは、数値以上の驚きがある。なお燃費はGLE 63 S SUVで13.6〜13.2L/100km(暫定値)。高性能V8としての割り切りと、ハイブリッド技術による現実路線のバランスが読み取れる。

サスペンションと4WDが生む「乗り味」の幅広さ
パワートレインと同様に、シャシー面も抜かりなく刷新されている。両モデルに標準装備されるAMG RIDE CONTROL+は、エアサスペンションと連続可変ダンパーを組み合わせた適応型サスペンションシステム。コンフォートからスポーツ、さらにオフロード走行向けの「トレイル」モードまで、走行シーンに応じて足まわりのキャラクターを大きく変えられる。
トレイルモードでは車高が55mmアップするほか、スポーツ/スポーツ+モードでは10mmダウン。高速巡航時(120km/h以上)には自動で10mm下がり、空気抵抗の低減と燃費改善にも寄与する設定だ。
アクティブロールスタビライゼーションも両モデルで標準化。電動メカニカルスタビライザーが前後両軸で作動し、センサーが毎秒1,000回もの頻度で路面状況とドライバーの操作を解析してボディーの動きを瞬時に補正する。コーナリング時の安定感やオフロードでのトラクション確保に貢献するとプレスリリースは説明している。
駆動系はAMGパフォーマンス4MATIC+を採用。前後トルク配分を完全可変で制御するフルタイムAWDで、リアアクスルには電子制御ロック式デフが標準装備される。トランスミッションはAMG SPEEDSHIFT TCT 9速。ドライビングモードは「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」「トレイル」「スリッパリー」「インディビジュアル」の6種。スポーツ+ではシフト時の意図的なミスファイアとブリッピングが有効になり、V8サウンドをより劇的に演出する。

デザインと内装の刷新ポイント
外観はフロント周りを中心に大幅に刷新されている。AMG専用のラジエーターグリル、拡大されたエアインテーク、そしてAMG固有のシグネチャーを持つ新LEDライトが前顔の印象を刷新。リアには迫力のツインテールパイプとディフューザー造形が与えられ、「V8搭載モデルである」ことを視覚的に主張する。
GLE 63 Sには最大22インチ、GLS 63には最大23インチのAMGホイールが設定される。鍛造ホイールオプションも用意されており、見た目と走りの両面でこだわりを持つユーザーのニーズに応える。
インテリアは最新世代のMB.OS(メルセデス・ベンツ・オペレーティングシステム)を搭載。高解像度ディスプレイにトルク配分やGフォース、詳細なエンジンパラメーターなどAMG専用の走行情報が表示される。ステアリングホイールはナッパレザー、MICROCUTマイクロファイバー、カーボンから選択可能。シート表皮にはナッパレザー「エクスクルーシブ」や「エクスクルーシブスタイル」のほか、ヤットブルーやタルトゥーフォブラウン、カーミンレッドといった限定色を含むマニュファクトゥールオプションも設定されている。
外装の特別色もマニュファクトゥール仕様として充実。ハイテックシルバーマグノ、パタゴニアレッドメタリック、ミスティックブルーメタリックなど7色が用意され、他オーナーとの差別化を図りたいユーザーに響くラインナップだ。

主要諸元(GLE 63 S/GLS 63 比較)
プレスリリースで公表された両モデルの主要スペックを整理した。多くの機構は共通で、加速・ホイール径・燃費などに差がある。
| 項目 | GLE 63 S 4MATIC+ | GLS 63 4MATIC+ |
|---|---|---|
| エンジン | 4.0L V8ビターボ+ISG(AMG M177 EVO) | |
| 総排気量 | 3,982cc | |
| 最高出力 | 450kW(612馬力)+ISG 17kW(23馬力) | |
| 最大トルク | 850Nm(2,500-4,500rpm)+ISG 205Nm | |
| 0-100km/h加速 | 3.9秒 | 4.2秒 |
| 最高速度 | 280km/h(電子リミッター) | |
| 駆動方式 | AMGパフォーマンス4MATIC+(フル可変トルク配分) | |
| トランスミッション | AMG SPEEDSHIFT TCT 9速 | |
| ホイール最大径 | 22インチ | 23インチ |
| 複合燃費(欧州・暫定) | 13.6〜13.2 L/100km | 13.7〜13.4 L/100km |
| CO₂排出量(欧州・暫定) | 308〜299 g/km | 312〜305 g/km |
※欧州仕様の暫定値(Preliminary)。最高速度は電子リミッター。GLE 63 SにはSUVとクーペがあり、クーペの複合燃費は13.4〜13.1 L/100km。日本導入時期・国内価格は本稿執筆時点で未発表。
Roadly編集部コメント
電動化シフトが加速するプレミアムSUV市場において、AMGがV8を「終わらせない」という強いメッセージを打ち出した今回の発表は、率直に言って胸が熱くなる。フラットプレーンクランクシャフトは、フェラーリのV8(458/488/F8など)が長年採用してきたことで知られる手法だ。AMG自身も2020年のGT ブラックシリーズで初の量産フラットプレーンV8を投入しており、今回はその思想を主力SUVであるGLE/GLSにまで広げてきた点に大きな意義がある。マイルドハイブリッドの組み合わせによって法規制をクリアしながら、V8固有の官能的なサウンドと加速フィールをキープする戦略は、同カテゴリのライバルであるBMW M・ポルシェへのはっきりとした回答でもある。3列シートのGLS 63は特に希少な存在で、実用性と非日常性を同時に求めるユーザーにとって、現時点で代替の効かない選択肢になりえる。日本導入スケジュールや国内価格はまだ未発表であるため、続報を待ちたい。
新型GLE 63 SとGLS 63は、V8ビターボが進化の余地を残していることを力強く示した。日本仕様の詳細が明らかになり次第、Roadlyでは改めてレポートをお届けする予定だ。
情報源・出典
- 情報源:Mercedes-AMG 公式(欧州)
- プレスリリースタイトル:V8 power at its finest: The new Mercedes-AMG GLE 63 S 4MATIC+ and Mercedes-AMG GLS 63 4MATIC+
- プレスリリースURL:https://mercedes-benz-media.co.uk/releases/1692
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。