2026年8月、メルセデス・ベンツはCクラス セダンおよびエステートの大幅改良モデルを欧州で正式発表した。これはフルモデルチェンジではなく、現行Cクラスに対するCクラス史上もっとも包括的な技術アップグレードと位置づけられている。自社開発OS「MB.OS」の全面採用、複数AIエージェントを束ねた第4世代MBUX、欧州ユーロ7規制を先取りした新世代エンジン群など、刷新の範囲はソフトウェアからシャシーまで多岐にわたる。なお日本導入時期・国内価格・日本仕様は現時点で未発表であり、本記事で紹介するスペックや燃費数値はすべて欧州仕様・WLTPモードによるものだ。
この記事のポイント
- フルモデルチェンジではなくCクラス史上最大規模の技術アップグレード。現行セダン/エステートが対象
- MB.OS+第4世代MBUXにChatGPT・Gemini・Bingの3AIを統合。ARナビもCクラスへ初搭載
- 全ガソリン/ディーゼルに48Vマイルドハイブリッド。PHEVはWLTP電気航続最大100km
- 欧州価格はC 200 セダンが税込48,844ユーロから。日本導入時期・価格は未発表
「進化」か「刷新」か。その答え
メルセデス・ベンツ公式の発表によれば、今回の新型Cクラスは世代交代ではない。1982年の初代登場以来、累計1,200万台超を販売してきたCクラスの現行世代(セダン/エステート)に対する、Cクラス史上もっとも包括的な技術アップグレードというのがメーカーの公式見解だ。
なぜこのタイミングか。背景にあるのは電動化の潮流だ。欧州では電気自動車版の新型Cクラスがすでに市場に投入されており、今回はその直後に内燃機関モデルが次の大きな技術的飛躍を遂げるという二段構えの戦略になっている。電動化と内燃機関の双方を進化させ、顧客の選択肢を広げるという姿勢が読み取れる。
メルセデス・ベンツ・グループの販売・カスタマーエクスペリエンス担当取締役マティアス・ガイゼン氏は「新型Cクラスは、継続性と革新が両立できることを証明している。慣れ親しんだ定番が、現代的な相棒になる」と語っている。欧州での受注は2026年8月18日に開始。ドイツ国内価格はC 200 セダンで税込48,844ユーロ(税抜41,045ユーロ)からとなっている。

外観の変化。光と造形で刷新
エクステリアはフロント・リアともにシャープ化が施され、スポーティなシルエットをより力強い表情へと引き上げている。最大のトピックはラジエーターグリルだ。Cクラスとして初めて発光グリルを採用し、垂直基調のデザインにクローム調のホットスタンプ加工されたスターパターンが三次元的な奥行きを演出する。クロームサラウンドに組み込まれたLEDライトガイドがグリルを縁取り、高光沢ブラックパネルがグリルとヘッドランプを視覚的に一体化させている。
新設計のヘッドランプはデイタイムランニングランプにスター(星)の意匠を採用。セダンはテールランプにもスターデザインが用いられている。また、サイドシルへのライトプロジェクター初採用も注目点だ。ドアを開けるとメルセデスのパターンを地面に投影し、ドアミラーはスターを車両脇に投影する演出は、夜間の視認性向上にも寄与するという。
ボディカラーは新色2種を追加。上品なラベンダーシルバー(メタリック)と、光の角度によって表情が変わるブルーグレーのムーディースカイグレー(メタリック)が選べるようになった。装備面ではCクラス初となる「AMGラインプラス」を設定。高光沢ブラックのテールパイプトリムやスポイラーリップ、インテグラルシート風スポーツシート、レッドのトップステッチとシートベルトなどスポーティな要素を凝縮している。

インテリア。上質さとデジタルの融合
室内は新型Sクラスのエッセンスを取り込みながら、Cクラスらしいスポーティな雰囲気を維持している。デジタルコクピットは12.3インチのコクピットディスプレイと11.9インチの縦型センターディスプレイを組み合わせ、センターディスプレイはトリム面から浮いているように見えるレイアウトだ。新デザインのマルチファンクションステアリングはクルーズコントロールとDISTRONICをロッカースイッチ、音量をローラーで操作する設計で、触覚フィードバック付きの静電容量式コントロールパネルを採用している。
オプションのBurmester® 3Dサラウンドサウンドシステムは15スピーカー・710Wアンプ構成でDolby Atmosに対応。空間効果は10段階で調整でき、音の焦点を1列目または2列目に寄せることもできる。シートベルトバックル検知によって乗車状況に合わせ焦点を自動最適化する機能も新たに加わった。
アンビエントライトは64色・10のカラーワールドを用意し、空調温度を変えると色でフィードバックを返したり、アクティブブラインドスポットアシストが作動するとドアハンドル周辺が赤く点滅したりと、光が情報伝達の役割を担うインタラクティブな設計になっている。内装の新色はビーチブラウン(ARTICO人工皮革・レザー・ナッパレザー)とチェリーレッド(ARTICO人工皮革)。AMGラインのレザーシートにはサイドボルスターへのモカシンステッチが初採用された。

エステートの実力。490Lの積載力
Cクラス エステートはセダンと並ぶ主力ボディタイプであり、日本でいうステーションワゴンに相当する。ラゲッジ容量は490リッターを確保し、後席を倒した状態では最大1,510リッターまで拡大できる。後席は標準で40:20:40分割となっており、中央席を独立して前倒しすることも可能だ。
EASY-PACKテールゲートを標準装備しているほか、引き出し式ラゲッジカバーと仕切りネットは2分割構造でそれぞれ専用カセットに収納できる使い勝手の良さも備えている。アクティブなアウトドアや家族での遠出など、荷物が多くなりがちなシーンで力を発揮するパッケージだ。空力面では空気抵抗係数(Cd値)0.26からという数値が公表されており、実用性と空力効率を高い次元で両立している。

パワートレイン。全機種48Vマイルドハイブリッド化
今回の改良における技術的な柱のひとつが、全エンジンの48Vマイルドハイブリッド化だ。ガソリン・ディーゼルを問わず、すべてのモデルに第2世代ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)を搭載。ISGは最大17kW・205Nmのアシストをエンジンに加え、9速オートマチック「9G-TRONIC」のハウジング内に統合されている。コースティング(エンジンを切り離した惰行)とエネルギー回生を可能とし、アイドリングストップの作動もほとんど感知できないほどスムーズという。
ガソリンエンジンはM 254 EVO型2.0リッター直列4気筒で、出力は3段階から選択できる。最上位のC 300は190kW(258PS)/400Nm、C 250は160kW(218PS)/320Nm、ベースのC 200は130kW(177PS)/270Nmだ。注目は新開発の電動補助コンプレッサー(電動スーパーチャージャー)の採用。48V電源で駆動し、ターボが立ち上がるまでの空白を埋める仕組みで、発進時から追い越し加速まで途切れのない出力特性を実現している。さらにC 300にはオーバーブースト機能があり、約20秒間20kWを上乗せできる。ISGの寄与も含めたシステム総合出力は225kWに達する。
ディーゼルはOM 654 EVO型直列4気筒で、C 200 dが120kW(163PS)、C 250 dが147kW(200PS)。HVO100やB10・B20などのバイオ燃料にも対応しており、欧州での環境規制対応を見据えた設計だ。プラグインハイブリッドは後輪駆動と4MATIC(四輪駆動)が設定され、その最上位となるC 400 e 4MATICはシステム出力最大290kW(395PS)・最大トルク650Nmを発揮する。電気モーター単体は100kW/440Nm、駆動用リチウムイオン電池の有効容量は19.53kWhで、WLTPモードでのEV航続距離は最大100kmとなっている。充電はAC最大11kW、DC最大55kWに対応する。なお、これらの数値はすべて欧州仕様・WLTPモードによるものであり、日本仕様のスペックや燃費は別途確認が必要だ。

走りの質感。シャシーと静粛性の向上
サスペンションはフロントの片側4リンク、リアのマルチリンク(5リンク)構成を継続しながら、剛性の高い結合と新チューニングのアジャスタブルダンピングによってボディの動きをより抑制し、ステアリングレスポンスをダイレクトかつ正確にしている。ダイナミック性能と長距離快適性の両立を狙ったチューニングだという。
リアアクスルステアリング(後輪操舵)は引き続き採用されており、最大2.5度の舵角によって最小回転円が43cm縮小され10.64mに。100km/h未満では後輪を前輪と逆位相に動かして取り回しを向上させ、100km/h超では同位相に転舵して高速域の安定性を高める制御となっている。急激なレーンチェンジや回避操作でも安定感を維持できるのはこの後輪操舵の恩恵だ。
静粛性にも注力が見られる。空気抵抗係数(Cd値)はセダンが0.24から、エステートが0.26からと公表されている。空力最適化されたドアミラーベースやテールランプの剥離エッジ、ウインドスクリーンの追加シールなどで風切り音を低減し、排気系はケージ状マウントで振動の車体伝達を抑えている。

MB.OSとMBUX。車がスマートフォンに近づく
今回の大幅改良で最も革新的なのが、メルセデス・ベンツが自社開発した車載OS「MB.OS」の全面採用だ。ソフトウェアとハードウェアを分離した「チップ・トゥ・クラウド」アーキテクチャーにより、インフォテインメントから運転支援、走行ダイナミクスまで車両の全ドメインを統合的に制御する。さらにOTAアップデートにより購入後も新機能を追加できる点は、スマートフォンに近い使い方を可能にする。
第4世代となるMBUXは、ChatGPT・Microsoft Bing・Google Geminiという3つのAIエージェントを1つの車載インフォテインメントに束ねるマルチエージェント方式を採用。「ハイ、メルセデス」で起動するバーチャルアシスタントは複数ターンにわたる自然な会話に対応し、株価や天気、スキー場の積雪状況まで答えられる。ナビゲーションはGoogleマップベースで、Google Cloudの「Automotive AI Agent」を統合した最初期のシステムのひとつとなっている。
SクラスやEQSに採用されてきたAR(拡張現実)ナビゲーションが、Cクラスとして初めて選べるようになったことも見逃せない。ヘッドアップディスプレイに実際の景色と重なる形で三次元の案内矢印を表示する機能で、直感的なルート誘導が可能になる。ディスプレイの描画にはUnityゲームエンジンによるリアルタイムグラフィックスを採用しており、表示品質も大幅に向上している。

運転支援MB.DRIVE。段階的に選べる機能
運転支援システムはMB.DRIVEという名称で体系化されており、使い方や予算に応じて段階的に選択できる構成になっている。ただし、これらはあくまでドライバーをサポートするシステムであり、運転の責任はドライバー自身にあることは言うまでもない。装備の設定は市場・仕様によって異なる点にも注意が必要だ。
ベースとなる「MB.DRIVE ASSIST」は、ウインカーレバーを軽く操作するだけで車線変更を行うレーンチェンジアシストを備える。上位の「MB.DRIVE ASSIST PLUS」は一時停止標識や赤信号手前での自動減速など、複雑な交通状況への対応力を追加。さらに上の「MB.DRIVE ASSIST PRO」は市街地の混雑も含むポイント・トゥ・ポイントの走行支援を目指すが、これは当初中国市場への導入が予定されているという。
駐車支援の「MB.DRIVE PARKING ASSIST」は駐車から出庫まで自動で行う機能だ。ユニークな新機能として、Digital Extraの「リバースファンクション」がある。直前に前進した経路の一部を自動でバックでたどる機能で、狭い場所での転回が難しいシーンで有効に働く。センサー構成は最大10個の外部カメラ、5個のレーダー、12個の超音波センサーで、水冷式コントロールユニットは最大254TOPSの演算処理を行う。

日本への導入は?現時点での情報整理
今回発表された新型Cクラスは、あくまで欧州(ドイツ本国)での発表であり、日本への導入時期・国内価格・日本仕様については2026年8月時点で一切未発表の状態だ。現行Cクラスは日本市場でもセダンとステーションワゴンがラインナップされており、新型への移行が行われる可能性は高いが、どのモデルが導入されるか、価格帯がどうなるかは続報を待つ必要がある。
全エンジンが今後のEU7(ユーロ7)排出ガス規制への対応を織り込んでいる点は、将来的なエンジン存続の観点でも好材料だ。PHEVのC 400 e 4MATICが日本に導入されれば、WLTPモードで最大100kmのEV航続距離と395PSのシステム出力を併せ持つ現実的な選択肢になる。Roadlyでは日本仕様の情報が入り次第、改めてお伝えする予定だ。

新型Cクラスの主要諸元(欧州仕様)
| モデル | エンジン | 最高出力 | 最大トルク |
|---|---|---|---|
| C 200 | 2.0L 直4ガソリン+48V MHEV | 130kW(177PS) | 270Nm |
| C 250 | 2.0L 直4ガソリン+48V MHEV | 160kW(218PS) | 320Nm |
| C 300 | 2.0L 直4ガソリン+48V MHEV | 190kW(258PS) | 400Nm |
| C 200 d | 直4ディーゼル+48V MHEV | 120kW(163PS) | 非公表 |
| C 250 d | 直4ディーゼル+48V MHEV | 147kW(200PS) | 非公表 |
| C 400 e 4MATIC | 直4ガソリン+電気モーター(PHEV) | 最大290kW(395PS) | 最大650Nm |
※すべて欧州仕様。MHEV=48Vマイルドハイブリッド。ディーゼル2機種のトルクはメルセデス・ベンツ公式プレスリリースで未公表。C 400 e 4MATICの数値はシステム出力/システムトルク。
※プラグインハイブリッドは後輪駆動と4MATIC(四輪駆動)が設定される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ボディタイプ | セダン/エステート(日本のステーションワゴンに相当) |
| トランスミッション | 9G-TRONIC 9速AT(PHEVは第4世代NAG3に電気モーターとインバーターを内蔵) |
| マイルドハイブリッド | 48V電気システム+第2世代ISG(最大17kW/205Nmをアシスト) |
| オーバーブースト | C 300で約20秒間20kW(27PS)を上乗せ。ISG分を含むシステム総合出力225kW |
| PHEV 電気モーター | 100kW/440Nm |
| PHEV 駆動用電池 | リチウムイオン、有効容量19.53kWh |
| PHEV EV航続距離 | 最大100km(WLTP) |
| PHEV 充電 | AC最大11kW/DC最大55kW |
| サスペンション | フロント:片側4リンク/リア:5リンクのマルチリンク |
| 後輪操舵 | 最大2.5度。回転円を43cm縮小し10.64m |
| 空気抵抗係数(Cd値) | セダン 0.24から/エステート 0.26から |
| ラゲッジ容量(エステート) | 490L(後席格納時 1,510L)/後席40:20:40分割 |
| ディスプレイ | 12.3インチ コクピット+11.9インチ 縦型センター |
| 運転支援センサー | 外部カメラ最大10/レーダー5/超音波12。制御ユニットは最大254TOPS |
| ドイツ本国価格 | C 200 セダン 48,844ユーロ(付加価値税込)/41,045ユーロ(税抜)から |
| 受注開始 | 2026年8月18日(欧州) |
| 日本導入 | 未発表 |
※2026年8月17日のメルセデス・ベンツAG公式発表(ドイツ・シュツットガルト)時点の欧州仕様。価格はドイツ本国のもので、納車費用等は含まない。日本導入時期・国内価格・日本仕様はいずれも未発表で、上記の数値は日本仕様のものではない。
※EV航続距離および燃費はWLTPモードの参考値で、実際の値は運転スタイル、環境条件、電池の劣化、装備、積載などによって変動する。
※運転支援システムは運転を支援するもので、ドライバーの責任を免除しない。装備・機能の設定は市場や仕様により異なる。
Roadly編集部コメント
Cクラスはメルセデス・ベンツの「普通の選択肢」として長年親しまれてきたモデルだが、今回の改良はその印象を大きく塗り替えるものだ。特に印象的なのがMB.OSとMBUXの進化で、3つのAIエージェントの使い分けや購入後のOTAアップデートは、2025年の新型CLAで初めて実用化されたMB.OSの世界が、ブランドの中核であるCクラスまで広がったことを意味する。SクラスやEQSで先行していたARナビゲーションの採用も同じ流れだ。ライバルとなるBMW 3シリーズやアウディA5(旧A4)と比べても、ソフトウェア面での踏み込み方は目を引く。国内でPHEVが導入されれば、EV航続距離100kmという数字は日常の通勤・買い物をほぼ電気でまかなえる水準で、使い勝手の高さが際立つだろう。
Cクラス史上最大規模の技術刷新を果たした新型モデルは、エクステリア・インテリア・パワートレイン・ソフトウェアのすべてにわたって進化を遂げている。日本導入の詳細は未発表だが、続報が出次第、改めて国内仕様の詳細をお届けする。
情報源・出典
- 情報源:Mercedes-Benz 公式(欧州)
- プレスリリースタイトル:The new Mercedes-Benz C-Class: Refined strength. Trusted continuity.
- プレスリリースURL:https://media.mercedes-benz.com/c-class
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。