ロールス・ロイス ブラックバッジ カリナン×シリル・コンゴ コラボ限定5台の全貌
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ロールス・ロイス ブラックバッジ カリナン×シリル・コンゴ コラボ限定5台の全貌

2026.05.18

世界にたった5台だけ存在するロールス・ロイスが誕生した。ロールス・ロイス公式の発表によると、同社はフランス系マルチディシプリナリー・アーティストのシリル・コンゴを迎え、ブラックバッジ カリナンのインテリア全面をすべて手描きで仕上げるというプロジェクトを実現させた。単なる「アーティストエディション」ではなく、コンゴ自身が英国グッドウッドの本社アトリエに6ヶ月以上常駐し、職人チームと肩を並べて制作するという、ロールス・ロイス史上でも前例のない深度のコラボレーションだ。クルマを「移動手段」としてではなく「動く美術作品」として捉えるとき、その極北がここにある。

この記事のポイント

「コンゴバース」とは何か

シリル・コンゴはグラフィティの世界から出発し、現在はキャンバス・彫刻・インスタレーションなど多岐にわたる表現を手がける国際的なアーティストだ。彼が今回のコラボレーションのために構築した独自の美的宇宙が「コンゴバース(The Kongoverse)」と呼ばれる概念で、ロールス・ロイス公式の説明によれば、数式・シンボル・ピラミッド・原子・架空の惑星が混在する想像上の空間だという。

コンゴの兄が物理学者であることも影響し、量子物理学への強い関心がこの世界観の根底にある。数式や数学的記号が作品の中にさりげなく埋め込まれており、単なる装飾ではなく「無限の想像力の可能性」を視覚化しようとする意図が込められているとコンゴ自身はコメントしている。ロールス・ロイスのインフィニティシンボルとも共鳴するこのテーマは、ブランドとアーティストの哲学が自然に交差した結果といえるだろう。

「コンゴバース」とは何か

手描きの内装という異次元の作業

ロールス・ロイス公式の発表が明かす制作プロセスは、想像を超えるほど手が込んでいる。インテリアサーフェスセンターのクラフトマンたちはまず、ファシア・センターコンソール・ピクニックテーブル・リアシート間のウォーターフォールなど合計19点のベニア材パネルをブラックで下塗りし、専用治具に固定して待機させた。そこへコンゴが各サイズのエアブラシを手に取り、コンゴバースの世界を直接描き込んでいく。仕上げとして各パネルには10層のラッカーが施され、研磨とポリッシュで深みのある光沢面へと仕上げられた。

スターライトヘッドライナーの制作は特に印象的だ。1,344本の光ファイバーを使い夜空を再現するこのロールス・ロイスの名物装備を、コンゴは70色以上のペイントで彩色している。架空の惑星・星座・量子物理学の方程式が描かれた後、全「星」の位置と発光色をアーティスト自身がひとつひとつ確認・マーキングし、職人が手作業でファイバーを配置した。ブルー・フェニックスレッド・フォージイエロー・コバルトブルーなど複数の発光色が組み合わされ、さらに天井全長にわたる「シューティングスター」も盛り込まれた。これはロールス・ロイス史上初の試みだとロールス・ロイス公式は強調している。

手描きの内装という異次元の作業

ロールス・ロイス初の試みが外装にも

ボディカラーは「ブルークリスタル オーバー ブラック」。ディープブラックの塗面にブルーの微粒子を混ぜたラッカーを重ね、光の角度によって青みがかって見えるという仕様だ。ロールス・ロイス公式によれば、この5台にはブランド初となる「グラデーションコーチライン」が採用されている。左サイドはフェニックスレッドからフォージイエローへ、右サイドはマンダリンからトゥルケーゼへとなめらかに色が変化し、その中にコンゴのトレードマークである「タグ」グラフィックがモチーフとして組み込まれている。

さらに、23インチのパートポリッシュド ブラックバッジアロイホイールの裏側に設けられたブレーキキャリパーは4輪すべてで異なる色を採用する。フェニックスレッド・トゥルケーゼ・フォージイエロー・マンダリンの各色がコーチラインと内装のカラーアクセントと対応しており、クルマ全体を貫くカラーストーリーが外装から内装まで一気通貫している。コンゴの「タグ」モチーフはイルミネーテッドトレッドプレートや傘にも展開され、さらにドア内張りのレザーには刺繍で再現されているとのことだ。

ロールス・ロイス初の試みが外装にも

なぜ「前例のない」コラボといえるのか

ロールス・ロイスがアーティストとコラボレーションすること自体は過去にも行われてきた。しかし今回が異なるのは、コンゴをチームの「外」に置かずに「内側」へ完全に取り込んだ点にある。ロールス・ロイス公式のビスポーク責任者フィル・ファーブル・ド・ラ・グランジュは、「生産開始の6ヶ月前からコンゴをグッドウッドに招き、私たちのスペシャリストや職人に引き合わせ、ツールや技法を共有し、フルペイントパレットを提供した」と語っている。

ビスポークファシリティ内にコンゴ専用のワークスペースが設けられ、彼はデザイン・エンジニアリング・クラフトマンシップのすべての工程に当事者として関わった。この体制がコンゴのグラフィティルーツにある「その場の即興性」を最大限に活かす環境を生んだといえる。プロジェクトはロールス・ロイスのプライベートオフィス(ニューヨーク・ソウル・グッドウッド)を通じてキュレーションされており、招待制のこのオフィスがオーナーとブランドをつなぐ濃密な対話の場として機能している。

Roadly編集部コメント

「ビスポーク」という言葉を使えばいくらでも「世界に一台」を謳えるが、このプロジェクトはその言葉の重みがまるで違う。アーティストが半年間もアトリエに住み込み、職人と同じ目線で車両を仕上げるというアプローチは、高級車の特注コミッションというよりも「共同制作された美術品」と表現するのが正確だろう。カーコレクターがアートシーンにも強い関心を持つという傾向は世界的に顕著で、ロールス・ロイスはその感性を正確に捉えている。5台それぞれが異なる表現を持ちながら同一テーマを共有するという設計思想も巧みで、コレクター心理をよく理解した企画といえる。「走れる美術作品」の最高到達点を知りたい方には必見のプロジェクトだ。

世界5台のみというスケールの小ささが、逆にプロジェクトの密度と深さを象徴している。今後もロールス・ロイスとアートシーンの接近がどのような形で続くのか、続報に注目していきたい。

情報源・出典

本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。

※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。

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