「ベビーMカー」という呼び名が、いまや完全にそぐわなくなった。新型BMW M2 CSは523馬力・479ポンドフィートのトルクを誇り、わずか数年前なら本格的なスポーツカーと比肩するスペックを持つ。英国の著名カーライタ―Henry Catchpoleが運営するHagerty「The Driver’s Seat」チャンネルでは、この新型M2 CSを2002ベースのレストモッドと比較しながら、そのキャラクターの本質を掘り下げている。果たしてM2 CSは「小さいBMW」なのか、それとも全く別の生き物なのか。
この動画のみどころ
- BMW 2002ベースのレストモッドとの対比で浮かぶM2 CSの本質
- 523馬力はアストンマーティン ヴァンテージやアウディR8 V10と同等圏
- 標準M2と仕様書上は同一に見えて、実は足回りがCSL譲りに進化
- ダンプロードでも巨大なトルクを使いこなせる懐の深さ
ルーツは2002——半世紀の系譜
動画の冒頭でCatchpoleが持ち出すのは、1960年代末から70年代中盤にかけて生産されたBMW 2002だ。直列4気筒M10エンジンを積んだコンパクトな2ドアクーペは、BMWスポーツモデルの原点であり、M3よりも古い血統を持つとも言える。
今回登場するのは、友人Will Beaumont氏が手掛けた2002ベースのレストモッド。排気量を2.1リッターに拡大し、ツインデロルト45キャブレターを装着。約160馬力・約150ポンドフィートのトルクを発揮しながら、現代の基準では驚くほど軽量に仕上がっている。ビルシュタイン製ダンパーやLSDを組み込んだその走りは、まさにドライビングの本質を凝縮したものだとCatchpoleは語る。
Roadly編集部的に注目したいのは、この対比の持つ意味だ。ハーフセンチュリー以上前のコンパクトスポーツと最新M2 CSを並べることで、「BMWらしさとは何か」という問いが自ずと浮かび上がる。数値で語れない操る喜びの連続性を、動画は鮮やかに描いている。

523馬力——これは「ベビー」ではない
新型M2 CSのスペックを改めて整理すると、3リッター直列6気筒ツインモノスクロールターボで523馬力・479ポンドフィートのトルク。標準M2比で50馬力・37ポンドフィート増となり、0-100km/hは3.8秒を切る。
Catchpoleはこの数字を、同時代のライバルと丁寧に比較している。アストンマーティン ヴァンテージ(当該世代)が503馬力・479ポンドフィートのトルク、アウディR8 V10(プラスなし仕様)が500馬力台中盤・トルクはR8の方が少なめ、いずれも重量帯も近い。マクラーレン540Cのような本格的なスーパーカーとも比較できるレベルだと動画では紹介されている。
Roadly編集部の見立てでは、M2 CSが位置するのはもはや「小さなスポーツカー」ではなく「コンパクトボディのハイパフォーマンスマシン」というカテゴリだ。ポルシェ911のラインアップと同等の出力帯まで到達したという事実は、BMWがM2というネームプレートをどれほど本気で育ててきたかを物語っている。

足回りの進化——仕様書が語らない真実
動画中でCatchpoleが特に強調しているのが、標準M2とM2 CSのスペックシートが足回りの項目においてほぼ同一であるという点だ。ホイール、サスペンション形式、DSCの項目に至るまで一言も変わっていないという。「ポルシェなら細部の変更点を丁寧に訴求するはずだ」というコメントは、BMWのコミュニケーション戦略への静かな問題提起として興味深い。
実際には車高が8mm下げられ、ダンパーはM2 CSLから流用した専用品を再チューニング。スプリングも硬化させ、フロントにはキャンバーを追加している。これらの変更はスペックシートには現れないが、走りには確実に反映されているとCatchpoleは試乗で実感している。
週末ドライバーにとって特に気になるのは、雨の日の扱いやすさではないだろうか。動画では濡れた路面でのテストにも触れており、巨大なトルクを持ちながらも「リラックスして大きなペースをキープできる」という懐の深さが紹介されている。サーキット専用機ではなく、ストリートで日常的に楽しめる仕上がりである点は、週末ドライバーにとって大きなアドバンテージだ。

デザインとサウンドの正直な評価
スタイリングについてCatchpoleは「美しくはないが、M2 CSの追加装備が標準車のシェイプを正しい方向にまとめ上げている」と評価する。大型フェンダーフレア、ダックテールスポイラー、深みのあるフロントスポイラー、鍛造アルミホイール、カーボンルーフ——これらの装備が組み合わさることで、デザイナーJose Casasが当初のスケッチで描いていたビジョンに近づいたという見立てだ。
一方、唯一の「美的な失望」として挙げているのがヘッドライトだ。直近のCS系モデルでは黄色いアクセントがライトに採用されており、それがCSというネームプレートの視覚的なシグネチャーになっていた。今回それが省かれた点は、ディテールへのこだわりという観点で物足りなさを感じさせる。
サウンドについては「ミュージカルとは言えないが、ラフさの中に直6らしいハードなエッジがある」と正直に述べている。ターボ化された現代の直6エンジンとして、自然吸気時代のサウンドへのノスタルジーを求めるならば期待しすぎは禁物だが、無音ではなく個性を持った音質であることは確かなようだ。
Roadly編集部コメント
Roadly編集部として正直に言えば、M2 CSというクルマは「買えるMカーの中で一番コンパクトなもの」として選ばれることが多い。しかし今回の動画を見ると、そういった消極的な選び方ではもったいないと感じる。523馬力というスペックは、5年前なら間違いなくジュニアスーパーカーと呼ばれるレベルだ。ポルシェ 718ケイマンGT4 RSやメルセデスAMG GT43辺りを検討している層に、ぜひ比較候補として加えてほしい一台でもある。Hagertyチャンネルのような試乗レポートは試乗機会の少ない日本のユーザーにとっても貴重な情報源であり、特に動画中の「足回りがスペックシートに現れていない」という指摘は、ディーラーでの商談時に確認したいポイントとして覚えておく価値がある。
「ベビーMカー」という先入観を一度リセットして向き合うべき一台——それが新型BMW M2 CSの正体かもしれない。Hagerty「The Driver’s Seat」チャンネルの試乗映像では、2002レストモッドとの比較も含めた濃密なコンテンツが楽しめる。ぜひ動画もあわせてチェックしてほしい。
動画情報
- タイトル:This is no baby BMW. The New M2 CS drive and review | Henry Catchpole – The Driver’s Seat
- チャンネル:Hagerty
- 動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=Sa0r6HdBWQE
※本記事は上記の動画を参考に、編集部が独自に構成・執筆しています。