アストンマーティン・ヴァレン発表|850PS・V12搭載、フロントエンジン量産車世界最強のスーパーカー
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アストンマーティン・ヴァレン発表|850PS・V12搭載、フロントエンジン量産車世界最強のスーパーカー

2026.08.16

2026年8月14日、米国カリフォルニア州モントレーで、アストンマーティンはビスポーク部門「Q by Aston Martin」の最新作「ヴァレン(Valen)」を正式に発表した。5.2リッターV12ツインターボエンジンから850PSと1000Nmを絞り出し、メーカー製フロントエンジン量産車として世界最強を名乗る本モデルは、同ブランド113年の歴史においても前例のない出力を持つ。世界限定150台という希少性もさることながら、最大110kgの軽量化や専用チタンエキゾースト、Pirelli最新のCyber Tyreテクノロジーを導入するなど、その内容は数字以上に濃密だ。V12スペシャルモデルの到達点とも言えるヴァレンの全貌を、Roadly編集部が詳しく読み解いていく。

この記事のポイント

「世界最強フロントエンジン」とは何か

アストンマーティン公式が発表した資料において、ヴァレンには「メーカーが製造したフロントエンジン量産車として世界で最もパワフルな1台」「アストンマーティン113年の歴史で最強のフロントエンジン車」という2つの修飾語が付く。この表現には一定の限定条件があり、ミッドシップや電気自動車、あるいはアフターマーケットによるチューニング車両は対象外となる点は押さえておきたい。

それでも、フロントエンジン・後輪駆動という伝統的なレイアウトを守りながら850PSという数字を達成したことは素直に驚異的だ。同じフロントエンジンV12のフェラーリ12チリンドリ(830PS)や、アストンマーティン自身のフラッグシップであるヴァンキッシュ(835PS)と比べても、公称出力では頭ひとつ抜け出る水準にある。なおヴァンキッシュは、先日Heritage Editionコレクションでも主役を務めたモデルだ。車名「ヴァレン」はラテン語の「valens(強い・力強い)」に由来し、Valour、Valiantと連なる「V」で始まる車名の系譜を受け継ぐ。ヴァレンを手がけたQ by Aston Martinは、これらに加えてDBR22なども世に送り出してきたビスポーク部門で、今回は新設のSpecial Vehicle Operations(SVO)部門の知見も投入された。

アストンマーティン ヴァレンを斜め前方から見下ろしたフロント3/4ビュー

V12エンジンとトランスミッションの進化

心臓部は5.2リッターV12ツインターボチャージャー。ブランド史上最強仕様にチューニングされており、最高出力850PS・最大トルク1000Nmを発生する。特筆すべきはトルク特性で、わずか2500rpmという低回転域から1000Nmに達する点だ。高回転に頼らず街乗り域から爆発的な力を引き出せるということでもあり、公道での扱いやすさと迫力の両立を狙った仕様といえる。

トランスミッションは8速ZFオートマチックを採用。Vantage GT4レースプログラムで培ったシフトストラテジーを反映した改良版で、全ドライブモードでよりシャープかつ小気味よいシフトを実現したとアストンマーティンは説明する。これが0-60mph(約0-97km/h)3.0秒という加速性能にも直結している。最高速は214mph(約344km/h)で電子制御リミッターが作動する。

ドライブモードはSport・Sport+・Trackの3段階。スロットルマッピングもモードごとに変化し、SportとSport+はペダル踏み始めで多くのスロットルを開ける特性、Trackモードはリミット近傍での精密なコントロールを優先してより長くプログレッシブな特性に切り替わる。

V12を積む長いボンネットとトップベントが見えるヴァレンのフロントハイアングル

最大110kgの軽量化戦略

高出力化と同時にプロジェクトの中心課題として掲げられたのが軽量化だ。コアV12プラットフォーム比で最大110kgの削減を達成しており、カーボンファイバー・アルミニウム・チタン・マグネシウムといったモータースポーツ由来の素材を各部に採用している。

標準装備の軽量マグネシウムホイールは、バネ下重量を減らすことでステアリングレスポンス・ホイールコントロール・乗り心地すべてに好影響をもたらす。オプションのライトウェイトパックを選択すると、削り出しアルミ製サスペンションアームおよびナックル、チタン製シャシーボルトが追加され、単体でさらに16.9kgを削ることができる。

エキゾーストも専用開発のチタン製で、新設計のマイクロマフラーにより法規適合・軽量化・サウンドクオリティの向上を同時に実現している。クアッドエキゾーストの構成でテールパイプは上下各2本に分割。上側は常時開放でオルガンパイプのように高回転域の共鳴を生み、下側はドライブモードに連動して開閉バルブが作動する。低周波を抑えて高音域を際立たせるチューニングにより、劇的なクレッシェンドを描くサウンドに仕立てられている。なお上下に振り分けられたクアッドエキゾーストの構成は、ミッドエンジンハイパーカーのデザイン言語をフロントミッドシップの文脈に置き換えたものだとアストンマーティンは説明している。

軽量チタン製エキゾーストのテールパイプとパーフォレーテッドパネルのクローズアップ

シャシーとタイヤ・電子制御の統合

シャシーはESP・ダンパー・ステアリング・キャンバー・ブレーキシステムのハードウェア変更とソフトウェアキャリブレーションを組み合わせて刷新した。前後ラテラル剛性を強化して正確なレスポンスと方向転換を実現しつつ、ロールとピッチの動きを抑制。剛性感と俊敏さを引き上げながらも、プレイフルなハンドリングバランスは維持したとされている。リアサブフレームはソリッドマウントを採用し、モデル専用スプリング・ヘルパースプリング・BilsteinのDTXセミアクティブダンパーで足まわりを構成する。

ブレーキはフロント410mm・リア360mmのカーボンセラミックディスク。ブレーキブースターにより高速域・低速域を問わず精密なモジュレーションが可能で、踏みごたえのあるペダルフィールを維持している。

タイヤはPirelli P Zero R(フロント275/35 ZR21・リア325/30 ZR21)をヴァレン専用チューニングで装着。注目はPirelli最新のCyber Tyreテクノロジーの採用だ。これはリアルタイムのタイヤデータを車両のダイナミックコントロールシステムと共有できる唯一のハードウェア+ソフトウェア技術とされており、Bosch Engineeringとの共同開発によりデジタルアーキテクチャに完全統合。ESP・ABS・トラクションコントロールのしきい値を連続的に適応させ、状況に応じた制御と安全性を最適化する。

軽量マグネシウムホイールとカーボンセラミックブレーキのオレンジキャリパー

フルカーボンのボディとデザイン思想

ボディはフルカーボンファイバーのコーチビルド。チーフクリエイティブオフィサーのMarek Reichman氏は「これまでのアストンマーティンから大きく踏み出した挑発的なデザインであり、フロントエンジン・後輪駆動レイアウトを強調する攻撃的なスタンスを持つ。同時にフラッグシップとして求められる上質さと精緻なディテールも讃えている」とコメントしている。

フロントは深くリセスされたスリムなヘッドランプが急降下するボンネットラインの下に潜り込むように配置され、幾何学的なメッシュグリルと鋭角なスプリッターが組み合わさる。サイドでは伝統のストレーキをドアほぼ全長まで伸ばし、大型の機能的ベントに統合。ステップドシルとウエストラインの絞りが前後フェンダーの筋肉質さを引き立て、リア方向にはノコギリ歯状のボルテックスジェネレーターで床下気流を引き込んでダウンフォースを稼ぐ。

リアは固定式リアウィンドウとトランクリッドを廃してソリッドなテールゲートに置き換え、上部には空力ウイングを内蔵。大きく跳ね上がったテール下にはフルワイズのライトバーがガーニーフラップとして機能し、大型リアウイングを設けずにダウンフォースを生成する。発表時のカラーはQウルトラが開発した「サテン・アンドロメダレッド」で、見る角度によって赤・銅・ゴールドからブルーのアンダートーンへ変化するChromaflairテクノロジーを使用している。

サイドストレーキとステップドシルが際立つヴァレンのサイドプロファイル

インテリアの「視覚的な軽さ」哲学

コクピットのキーコンセプトとして公式が掲げるのが「視覚的な軽さ」だ。車両全体の大幅な軽量化を内装デザインでも表現するアプローチで、3Dプリント部品を多用した細身のセンターコンソールがその中心に置かれる。コンソールはドライバー側に傾斜して配置され、集中度の高いコクピット感覚を演出する。

シートはサポート性と長距離快適性を両立した新開発のSports Plusシートか、ドライビングに特化した軽量カーボンファイバー製パフォーマンスシートかを選択できる。内装トリムはSemi-Aniline Leather+AlcantaraまたはフルSemi-Aniline Leatherを基点に、Monotone・Duotone・Light Duotone・Tritone・Driver Focusedという5種のマテリアルスプリットを組み合わせる構成。さらにドライバーフォーカスドオプションとアクセントパックを加えることで、ほぼ無限に近いパーソナライゼーションが可能になる。

キャビン各所に配置された3Dプリント要素はValkyrie・DBS Zagato等の過去の限定スペシャルと同じアプローチで、エクステリアの冷却ベントを参照したパーフォレーション処理が軽さとシンプルさをさらに高める。センターのタッチスクリーンはValhalla由来の要素を取り込みながら寝かせた角度で統合されており、機能美と視覚的ノイズの削減を両立している。

3Dプリント部品によるスリムなセンターコンソールとドライバー側へ傾けたインテリア

限定150台・2027年Q2納車予定

生産台数は世界限定150台。アストンマーティンCEOのAdrian Hallmark氏は「V12パワートレインの生の躍動と比類ない出力を表現するデザインが必要だった。よりパワフルに、より軽く、そして壮大なサウンドトラックとともに、ドラマチックなデザインはドラマチックな性能に裏打ちされている」と語る。

また車両性能ディレクターのSimon Newton氏は「世界で最もパワフルなフロントエンジン量産車をベースに仕事ができるなら楽しくなるのは自明。キャラクターと能力を濃縮し、あらゆるスキルレベルのドライバーが扱いきれて、なおかつ熱心なドライバーが心底楽しめるスリリングな体験を届けることに全リソースを向けた」とコメントしている。

初回納車は2027年第2四半期を予定。コンフィギュレーターは configurator.astonmartin.com で公開済みだ。価格はプレスリリースに記載がなく、日本への導入および国内価格についても現時点では未発表だ。

フルワイズのライトバーとリアディフューザーを備えたヴァレンのリア3/4ビュー

アストンマーティン ヴァレン 主要諸元

項目 内容
車名 アストンマーティン ヴァレン(Aston Martin Valen)
ボディ 2ドアクーペ/コーチビルドのフルカーボンファイバーボディ
エンジン 5.2リッター ツインターボチャージドV12
最高出力 850PS
最大トルク 1000Nm(2500rpmから発生)
トランスミッション 8速ZF(Vantage GT4のシフトストラテジーを反映)
駆動方式 フロントエンジン・後輪駆動
0-60mph加速 3.0秒
最高速度 214mph(約344km/h)※電子制御リミッター作動
軽量化 コアV12プラットフォーム比で最大110kg減。オプションのライトウェイトパック単体で16.9kg減
ホイール 軽量マグネシウム(標準装備)
タイヤ ピレリ P Zero R フロント275/35 ZR21・リア325/30 ZR21
(P Zero Winter 2 フロント275/35 R21・リア325/30 R21 も設定)
ブレーキ カーボンセラミック フロント410mm・リア360mm
ダンパー ビルシュタイン DTX セミアクティブ
ドライブモード Sport/Sport+/Track
エキゾースト 軽量チタン製クアッドエキゾースト(3Dプリントチタン製フィニッシャー)
トランク容量 170リッター
生産台数 世界限定150台
初回納車 2027年 第2四半期(予定)
価格 未発表
日本導入・国内価格 未発表

※アストンマーティン グローバル広報(英国本社)の発表資料に基づく欧州仕様の数値。0-60mphは0-約97km/hに相当します。価格は発表資料に記載がなく、日本導入および国内価格も未発表です。内容は変更される場合があります。

Roadly編集部コメント

850PSというスペックだけで語られがちだが、ヴァレンの本質はその「削ぎ落とし方」にあると感じる。110kgの軽量化、Cyber Tyreとの制御統合、チタンエキゾーストのサウンドチューニングに至るまで、数字の裏にある設計哲学の密度が際立っている。フロントエンジン・後輪駆動という、ある意味「古典的」なレイアウトにこれだけの情報量を詰め込んできたことは、ミッドシップ全盛時代へのアストンマーティンなりの回答とも読める。V12エンジンの存続を懸けた旗艦的な意味合いも感じさせる1台だ。V12フロントエンジンという純粋な体験にこだわるドライバーにとって、150台という希少性も含め見逃せない選択肢になるだろう。

アストンマーティン・ヴァレンは、フロントエンジンスーパーカーの可能性を極限まで押し広げた1台といえる。2027年Q2の初回納車に向け、価格や日本仕様の詳細が明らかになるのを引き続き追いかけていきたい。

情報源・出典

本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。

※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。

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