フランスが誇る高級車ブランド、DSオートモビルが満を持して投入した新世代フラッグシップEV「N°8(ナンバーエイト)」が、2026年5月28日より全国の正規ディーラーで販売を開始した。メーカー希望小売価格は1,005万円からと、いよいよ本格的なラグジュアリー帯に踏み込む一台だ。Stellantisジャパンのプレスリリースによれば、WLTPモードで750kmという航続距離と0-100km/h加速5.4秒を両立し、単なる「おしゃれなEV」にとどまらない走りの実力も備えているという。SUVクーペという旬のフォルムに、フランス伝統の職人技「サヴォア・フェール」を纏ったこのモデルが、国産・ドイツ勢ひしめく日本市場でどんな存在感を放つのか、詳しく見ていこう。
この記事のポイント
- 97.2kWhバッテリー搭載でWLTP航続距離750km、クラストップレベルの実用性
- デュアルモーターAWDで最高出力350ps・0-100km/h 5.4秒のスポーティな走り
- Cd値0.24の高空力ボディと3層シーリング構造による圧倒的な静粛性
「N°8」とは何者か
DSオートモビルは1955年生まれの伝説的モデル「シトロエンDS」を源流に持つフランスのラグジュアリーブランドだ。「N°8」という名称はブランドが新たに導入した命名体系「N°(ナンバー)」シリーズの第一弾で、Stellantisジャパン公式の発表によれば、フランス語で「番号」を意味する「N°」はブランドのエレガンスとタイムレスな品格を象徴するという。
さらに「8」という数字には無限大(∞)を想起させる意味合いが込められており、バランス・静粛性・持続可能性という三つの軸を車体コンセプトとして表現している。2023年に発表されたコンセプトカー「DS AERO SPORT LOUNGE」の世界観を量産車に落とし込んだモデルであり、日本では2025年の東京フォーミュラE会場と2026年1月の東京オートサロンで先行披露されたのち、今回の市販化に至った。
グレード設定は最上位の「ETOILE AWD(エトワール AWD)」のみ。エトワールはフランス語で「星」を意味し、オプションのアブソリュートコンフォートパッケージを組み合わせることで装備の充実度がさらに高まる構成となっている。

内外装デザインの読み解き方
外観でまず目を引くのはフロントのライティングデザインだ。Stellantisジャパン公式の資料によれば、ヘッドライトには3つのライトユニットと8個のダイヤモンド型LED装飾を水平に配し、V字の縦型LEDデイライトと「DSライトブレード」が組み合わされる。さらに「DSルミナススクリーン」と呼ばれる光の流れるスクリーンがフロントに配置され、見た目の演出と同時に空気の流入を抑える空力的役割も担っているのが興味深い。
リアには同ブランドのラインナップで初採用となる垂直ライン入りの3D LEDテールランプを装備。立体的なスケールパターンが後方からの個性を際立たせる。さらにDSオートモビル独自の「DSピクセルLEDビジョン」が走行状況に応じて照射範囲と光量を細かく制御し、夜間の視認性向上と対向車への眩惑抑制を両立。後方カメラ映像を映すデジタルルームミラーも装備され、同乗者や荷物による視界の遮りを抑える。ボディサイドはドアハンドルをリトラクタブル化・ウィンドウ内収納型とすることで面の滑らかさを徹底追求しており、こうした積み重ねが風洞試験で検証されたCd値0.24という数値に結実している。
インテリアはナッパレザーをシート・ダッシュボード・ドアトリムに広く採用し、「クル・ド・パリ」パターンのステッチが視覚と触覚の両面で質感を主張する。クルージングヨットから着想を得たXシェイプステアリングやアンビエントライト(8色選択可)など、フランスのクラフツマンシップをインテリア全体で体感できる造りだ。初採用となるネックウォーマー内蔵ヘッドレストも、細部への気配りを示す好例といえる。

750km航続と350psを両立する電動技術
ボディサイズは全長4,845×全幅1,900×全高1,585mm、ホイールベース2,905mm、車両重量2,300kg、乗車定員5名というフラッグシップに相応しい堂々たる体躯である。パワートレインはSTLA-Mediumプラットフォームをベースに、97.2kWhの大容量バッテリーを搭載する。Stellantisジャパン公式の発表値では、WLTPモードで750kmの航続距離を達成しており、現行の国産・欧州ライバルEVと比較しても最上位クラスの数字だ。実用面では急速充電最大160kWに対応し、バッテリー残量の約55%までは150kW以上の出力を安定して受け入れられるという。80%までの平均充電出力も約126kWとされており、長距離移動でも充電待ち時間を最小限に抑えやすい設計になっている。
走りの核心は前後に配置された高効率電動モーターによるデュアルモーターAWDシステムだ。システム最高出力350ps、0-100km/h加速5.4秒という数値は、ラグジュアリーカテゴリにおいて十分に刺激的なレベルである。バッテリーをフロア中央に配置して低重心・前後重量配分の最適化を図り、新開発サスペンションと「DSアクティブスキャンサスペンション」を組み合わせることで路面状況に応じたダンパー制御を実現。FIAフォーミュラE選手権で培った回生ブレーキ技術を3段階から選択可能な形で搭載しており、ワンペダルドライブにも対応する。レースで磨かれたEV技術が市販フラッグシップに生かされているという点は、DSオートモビルならではの強みといえるだろう。

静粛性と快適装備の深掘り
ラグジュアリーカーにとって静粛性は走行性能と同等かそれ以上に重要な評価軸となる。N°8においてStellantisジャパン公式が特に強調するのが「3層シーリング構造」だ。ドアおよびボディサイドに3種類の異なるシーリング層を設け、さらに3層目をドア下部まで延長することで、音の侵入経路を多段階でシャットアウトする。消音効果を高めたラミネーテッドガラスとの組み合わせにより、公式リリースでは「静寂の繭」と表現されるほどの遮音性能を謳っている。
快適装備面では、アブソリュートコンフォートパッケージを選択することでパノラミックガラスルーフ(断熱・遮熱対応のラミネーテッドタイプ)、フロントシートのベンチレーション+マルチポイントランバーサポート、リアシートのベンチレーション、そしてステアリングヒーターが追加される。16インチワイドタッチスクリーンを備えた「DS IRISシステム」はブランド初の大型インフォテインメントで、スマートフォンライクな操作性を実現。さらにフランスのハイエンドオーディオブランド、FOCAL(フォーカル)による14スピーカーの3Dプレミアムオーディオ(アブソリュートコンフォートパッケージのみ)が、車内を音響的にも特別な空間へと引き上げる。

価格と競合ポジションを整理する
N°8の価格は1,005万円から、上位仕様のアブソリュートコンフォートパッケージを選ぶと1,045万円となる。この価格帯に名を連ねる欧州ラグジュアリーEVとしては、メルセデス・ベンツEQSやBMW iX、ボルボEX90などが挙げられる。それらと比較したとき、N°8が差別化の軸として打ち出すのはフランスという産地の個性と、デザイン・静粛性・乗り心地への偏執的ともいえる注力だ。ドイツ勢が走行ダイナミクスと先進技術を前面に押し出すのに対し、DSオートモビルは「移動体験そのものを芸術にする」という哲学を一貫させている。
Stellantisジャパン公式によれば、ボディカラーは既存3色(クリスタル パール/ノアール ペルラネラ/グリ パラディオム)に新色2色(ブラン アルバータ/ブルー トパーズ)を加えた計5色展開。鍛造アロイホイールはオプションで21インチも用意され、車名テーマ「ETOILE(星)」にちなんだ星座名(カシオペア座・こと座)が名付けられているあたりにも、世界観の作り込みへの執念が見える。1000万円超のEVに何を求めるか。スペック表の数字だけでなく、所有体験全体を重視するドライバーにとっては有力な選択肢となりうる一台だ。

Roadly編集部コメント
正直なところ、1000万円を超えるEVの国内市場はまだ成熟段階にあり、DSオートモビルというブランドの認知度も国産やドイツ勢には及ばない。それでもN°8には、数値スペックを超えた「体験の質」への真剣な投資が感じられる。750kmという航続距離とFocalオーディオ、3層シーリング、ネックウォーマーという組み合わせは、長距離グランドツーリングを愛するドライバーに刺さるポイントが多い。独自路線を貫くDSが日本のラグジュアリーEV市場にどこまで食い込めるか、販売動向を注視したい。試乗機会があれば、ぜひ高速巡航時の静粛性と回生ブレーキのフィーリングを確かめてほしい。
DSオートモビル「N°8」は、航続距離・充電性能・走りの三拍子に加え、フランスらしい美意識と静粛性を高い次元で融合したフラッグシップEVだ。今後の試乗レポートや国内での販売状況など、Roadlyでは引き続き最新情報をお届けする。
情報源・出典
- 情報源:Stellantis ジャパン 公式(日本)
- プレスリリースタイトル:DSオートモビル 新世代フラッグシップEVモデル「N°8」を発売
- プレスリリースURL:https://www.stellantis.jp/news/20260528_ds_automobiles_no8
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。