メルセデスAMGが2026年10月17日、59年の歴史で初めて自社開発したフルサイズSUV「Mercedes-AMG GT SUV」を正式発表した。最高出力860kW(1169馬力)、0-100km/h加速2.7秒(通常計測値)、最大710kWのDC急速充電対応というという数字が並ぶ。スポーツカーの低重心とフルサイズSUVの実用性の両立を掲げた、アファルターバッハ生まれの1台だ。
この記事のポイント
- F1技術由来の800Vバッテリーとアキシャルフラックスモーター3基で最高出力1169馬力を実現
- 10分の急速充電で最大450kmのWLTP航続距離を補充できる710kW DC充電に対応(GT 63/128kWhバッテリー)
- 新開発サスペンション「AMG ACTIVE RIDE CONTROL+」がスポーツ走行と上質な乗り心地を両立
59年目の「初」:自社開発フルサイズSUV誕生の意味
今回の「Mercedes-AMG GT SUV」は、メルセデスAMGが59年の歴史で初めて自社開発したフルサイズSUVだ。
ベースは電動の高性能アーキテクチャー「AMG.EA」で、先に発表された「AMG GT 4-Doorクーペ」に続く2台目となる。メルセデスAMGのCEOであるStefan Weckbach氏は「フルサイズSUVの実用性と、本物のAMGが持つ感情的なスポーツカーキャラクターを、初めて唯一無二の形で融合した」とコメントしている。
公式は、スポーティーな着座位置、低い重心、低く躍動的なシルエットを特徴に挙げ、軽量構造と車両設計で重量面の優位も確保したとしている。全長5,084mm(GT 53は5,080mm)、全幅2,001mmという堂々たるボディにもかかわらず、スポーティーな低めのシルエットを実現した点が、このクルマの設計思想の核心にある。

3基のアキシャルフラックスモーターとF1由来バッテリーの実力
GT SUVの上位グレード「GT 63」と「GT 55」には、AMG GT 4-Doorクーペでも採用されたアキシャルフラックスモーターが3基搭載される。アキシャルフラックスモーターは従来のラジアルフラックスモーターと比較して、同一体積あたりのトルク密度が高く、よりコンパクトかつ軽量に大出力を引き出せる点が特長だ。
GT 63の場合、最高出力は860kW(1169馬力)、最大トルクは2,000Nmに達する。加速性能は0-100km/hが2.7秒(通常計測)、0-200km/hが7.2秒。なお、メーカー公式が併記している2.5秒・6.8秒という数値は、米国式の「1フット・ロールアウト計測」によるものであり、日本で一般的なゼロ発進計測とは異なる点に注意が必要だ。
エントリーグレード「GT 53」はアキシャルフラックスではなく2基のPSM(永久磁石同期モーター)を搭載。最高出力400kW(544馬力)、0-100km/h加速4.2秒(通常計測)というスペックに落ち着くが、これとて現行SUVの水準では十分すぎる動力性能だ。
駆動方式は全グレード共通で「AMG Performance 4MATIC+」フルタイム全輪駆動。電動ならではの前後トルク配分の自在な可変制御が、AMGらしい走りを支える。
バッテリーは「AMG高性能電動バッテリー」と呼ばれる800V系ユニット。F1技術をフィードバックしたという直接冷却式の円筒形セルを採用し、高い電力密度とインテリジェントな熱マネジメントにより、瞬発的なブーストだけでなく、持続的な高出力を維持できることが特徴とされている。GT 63では530kW(721馬力)の「連続出力」をカタログ値として公式が明記しており、これはサーキット走行でも出力が劣化しにくい設計思想の表れだ。

710kW充電・10分で450km:急速充電がゲームチェンジャーに
高性能EVで常に課題となるのが「航続距離と充電速度」だが、AMG GT SUVはここでも突出した数値を打ち出してきた。
GT 63/GT 55(128kWhバッテリー仕様)では、最大710kW DC急速充電に対応。10分間で最大83kWhのエネルギーを補充でき、WLTPモードで最大454kmの航続距離に相当する量を充電できる。さらに10〜80%の充電にかかる時間は11分(106kWh)/12分(128kWh)とされており、長距離ドライブでの立ち寄り充電が現実的な選択肢になる。
106kWhバッテリー仕様では最大600kW DC充電対応、10分で最大386km分を補充可能。出力400kWの充電器でも、10〜80%の充電は14分(106kWh)/16分(128kWh)で済む。
WLTP航続距離は128kWhのGT 63で620〜700km(複合)、市街地走行に絞ると719〜806kmという数値が示されている。エントリーのGT 53(106kWhのみ)でも597〜668km(複合)を確保しており、日常使いでの充電頻度は大幅に抑えられるはずだ。
充電規格はCCS2(欧州)、GB/T(中国)、CHAdeMO(日本)、CCS1(韓国)、NACS(米国)の5つに対応するよう設計されている。800Vの充電器がない地域では、400Vでも充電できる。

新型サスペンションが開く「SUVのスポーツ走行」の可能性
AMG GT SUVには、新開発の「AMG ACTIVE RIDE CONTROL+」サスペンションが採用される。このシステムの最大の特徴は、アクティブなピッチ(加減速時の前後方向の揺れ)とロール(コーナリング時の横揺れ)の両方を統合制御する点にある。公式はピッチとロールの安定化を「初めて」搭載したと説明している。
また「AMG RACE ENGINEER」と呼ばれる走行設定システムにより、3つのロータリーコントロールを通じてレスポンス・コーナリング特性・ホイールスリップをドライバーが個別かつ細かく調整できる。
さらに、「AMGFORCE Sport+」ドライビングプログラムでは、AMGのV8エンジン、または6気筒エンジンのサウンドを再現した音がリアルタイムで再現され、疑似的な変速、シートの振動、連動したディスプレイ表示も組み合わされる。電動ならではの静粛性を保ちつつ、内燃機関時代のフィジカルな体験を残そうとするアプローチは、AMGのブランドらしさへのこだわりの表れといえる。

空力・デザイン・ラゲッジ:SUVとしての実力
スポーツカーDNAを謳いながらも、フルサイズSUVとしての実用性もしっかり確保されている。ラゲッジスペースは後席使用時で607リットル、後席を倒した状態で最大1,740リットルを確保。さらにフランク(ボンネット内の収納スペース)が78リットル、フロントのリキッドタンク111リットルも用意されており、荷物の積み分けにも対応する。
空力面では「AEROKINETICS」システムを採用。時速150km以下ではエアパネルが冷却風を絞り込んで空気抵抗を低減し、高速域ではルーフスポイラーが能動的に動作してダウンフォースを確保する仕組みだ。cd値はGT 63/55が0.27、GT 53が0.28と、全長5m超のSUVとしては極めて優秀な数値を実現している。
デザインについてメルセデス・ベンツのチーフデザインオフィサー、Bastian Baudy氏は「マッスルショルダー、ワイドトレッド、低いシルエットが、一目でAMGとわかるパフォーマンスを体現している」とコメントしており、外観からも走りへの期待を高める設計が意識されている。

価格・グレード・発売時期:日本導入はいつ?
メーカー公式の発表によれば、グレード展開はGT 53・GT 55・GT 63の3種類。欧州(ドイツ)での価格はエントリーのGT 53 SUVが113,050ユーロからとされており、受注は2026年10月20日から開始されている。GT 55およびGT 63については2027年春の発売が予定されている。
なお、現時点で日本への導入スケジュールおよび日本仕様の価格は公式から一切発表されていない。
GT 53の仕様を比較基準として参考にすると、車重はDIN値で2,525〜2,635kg。GT 63では2,585〜2,695kgとなり、128kWhバッテリー搭載時はさらに重くなる。この車重を「連続出力530kW」で推進するシステムの実力が、オーナーにとっての最大の関心事となるだろう。

メルセデスAMG GT SUV 主要諸元
| 項目 | GT 63 SUV | GT 55 SUV | GT 53 SUV |
|---|---|---|---|
| モーター | アキシャルフラックス×3 | アキシャルフラックス×3 | PSM×2 |
| 最高出力 | 860kW(1,169hp) | 600kW(816hp) | 400kW(544hp) |
| 連続出力 | 530kW(721hp) | 530kW(721hp) | 270kW(367hp) |
| 最大トルク | 2,000Nm | 1,860Nm | 800Nm |
| 0-100km/h | 2.7秒(2.5秒※) | 3.1秒(2.8秒※) | 4.2秒(3.8秒※) |
| 最高速度 | 270km/h(Driver’s Package) | 270km/h(Driver’s Package) | 250km/h(Driver’s Package) |
| バッテリー(正味) | 106/128kWh | 106/128kWh | 106kWh |
| 最大DC充電 | 600/710kW | 600/710kW | 600kW |
| 航続距離(WLTP複合) | 525〜585/620〜700km | 525〜585/620〜700km | 597〜668km |
| 車両重量(DIN) | 2,585/2,695kg | 2,605/2,715kg | 2,525/2,635kg |
| 全長×全幅×全高 | 5,084×2,001×1,656mm | 5,084×2,001×1,656mm | 5,080×2,001×1,653mm |
| ホイールベース | 3,040mm | 3,040mm | 3,040mm |
| 価格(ドイツ) | 2027年春 | 2027年春 | 113,050ユーロ〜(10/20受注開始) |
※メルセデス・ベンツ公式発表(2026年10月17日・欧州仕様)による。0-100km/hの括弧内は「1-foot rollout」計測値。バッテリー容量が2つあるものは「106kWh/128kWh」の順。日本導入・国内価格は未発表。
Roadly編集部コメント
最高出力より先に「連続出力530kW」を打ち出してきたのが、このクルマのいちばんの特徴だと思う。速さを一瞬で終わらせず、走り続けても落ちないことを売りにしている。一方で全幅2,001mm・車重2.5トン超というサイズは、日本の都市部や山道では取り回しの面で一考が必要になる。どちらかといえば高速道路や広い郊外路を主体に使うオーナーに真価が伝わるクルマといえる。710kWの充電インフラが日本でいつ普及するかという点も、実用性を左右する重要な鍵になりそうだ。
メルセデスAMG GT SUVは、電動ハイパフォーマンスSUVという新しいカテゴリにおいてひとつの頂点を示す1台だ。日本導入の有無・国内価格など、気になる情報はまだ未発表のものが多い。Roadlyでは今後のメーカー公式発表を随時追っていく。
情報源・出典
- 情報源:Mercedes-Benz 公式(欧州)
- プレスリリースタイトル:High-tech SUV with sports car DNA: The new Mercedes-AMG GT SUV
- プレスリリースURL:https://media.mercedes-benz.com/en/article/7d4d77de-1aad-4c4c-8a89-a3e140109495
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。