2026年9月30日、ランドローバーはレンジローバー スポーツ初となるフルバッテリーEVモデル「RANGE ROVER SPORT ELECTRIC」を英国・ゲイドンで発表した。20年以上の歴史を持つスポーティングSUVが、初めてフル電動パワートレインを手に入れたことになる。最高出力は550PS、最大トルクは850Nmでレンジローバー スポーツ史上最大。118.5kWhのバッテリーを積み、WLTPモードで約608kmの航続距離を備える。
なお、ここで取り上げるのは「RANGE ROVER SPORT ELECTRIC」であって、2026年に発表された「RANGE ROVER ELECTRIC」とは別のモデルだ。今回のリリースでも両車は別の車として扱われており、スポーツ側はトルクレスポンスの鋭さを売りにしている。
この記事のポイント
- 最大トルク850Nmはレンジローバー スポーツ史上最大。ダイナミックローンチモード作動時の0-100km/h加速は4.45秒
- 118.5kWhバッテリーを搭載し、WLTPモードで最大約608km、実走行で最大約536kmの航続を実現
- ボディ剛性をPHEVモデル比61%向上、重心を73mm低下。日本導入時期と国内価格は未発表
EV時代の「スポーツ」とは何か
レンジローバー スポーツは、レンジローバー ブランドの中で最もダイナミックなモデルとして位置づけられてきた。そのモデルが初めてフルEVパワートレインを手に入れた意味は小さくない。
JLR(ジャガー・ランドローバー)の発表によると、「RANGE ROVER SPORT ELECTRIC」はパフォーマンスSUVというカテゴリーで「スポーティング・ラグジュアリー」という新たな章を切り拓く存在だという。RANGE ROVER担当マネージング・ディレクターのマーティン・リンパート氏は「シームレスに統合された電動パワートレインにより、かつてないほどに素早いレスポンスと高い精度を実現した」とコメントしている。
EVというと静粛性や環境性能が前面に出がちだが、このモデルが押し出しているのはレスポンスだ。公式発表では、PHEVモデルより高剛性なボディと低重心化によって「RANGE ROVER ELECTRIC」を上回るトルクレスポンスを提供するとされ、トルクの立ち上がりは「RANGE ROVER ELECTRIC」比で50%速いと明記されている。別モデルである「RANGE ROVER ELECTRIC」をあえて比較対象に挙げている点に、キャラクターの違いを打ち出す狙いが読み取れる。

550PSと850Nm。数字が示す実力
パワートレインのスペックを整理しよう。260kWのモーターを2基搭載し、最高出力は550PS、最大トルクは850Nmに達する。このトルク値はレンジローバー スポーツ史上最大だ。
ダイナミックローンチモードを使用した場合の0-60mph加速は4.3秒、0-100km/h加速は4.45秒。公式発表によれば、この0-60mph 4.3秒という数字はV8エンジン搭載モデル「P540」に匹敵する。エンジン車と肩を並べる加速をモーターで実現したことになる。
なお、550PS仕様に加えて450PS仕様も設定される。ただし450PS仕様の詳細スペックは今回のリリースには記載がなく、今後の情報開示が待たれる。
バッテリーは高エネルギー密度の118.5kWhリチウムイオンを高強度アルミニウム製エンクロージャーに収めたもので、WLTPモードでの航続距離は最大378マイル(約608km)。実走行ベースでも最大333マイル(約536km)という数値で、日常使いから長距離ドライブまで幅広いシーンに対応できる水準だ。

充電性能と航続延長への工夫
航続距離と並んで気になるのが充電性能だ。公式発表によれば、公共のDC急速充電器を使用した場合、最短10分の充電で最大136マイル(約220km)ぶんの航続距離を補充できる。また、バッテリー残量10%から80%への充電は約22分で完了するとされており、ロングドライブ途中の充電停止を短く抑えられる設計だ。
外観デザインにも航続距離への配慮が織り込まれている。グリルとアロイホイールは空力特性を最適化したデザインで、高速道路走行時の航続距離を最大10マイル(約16km)延長することに貢献するという。見た目の特徴づけと効率の追求を同時に満たす、現代のEV開発らしい合理的なアプローチだ。
また、本モデルは「RANGE ROVER ELECTRIC」と並行して開発されており、EVパフォーマンスを最大限引き出す「ThermAssist(サームアシスト)」熱管理システムをはじめ、数多くの革新的な技術を採用しているとされる。

シャシーが変わった。剛性+61%・重心-73mm
パフォーマンスの向上はパワートレインだけにとどまらない。「RANGE ROVER SPORT ELECTRIC」は、PHEVモデルと比較してボディ剛性を61%向上させ、重心を73mm引き下げている。ハンドリングの土台そのものを作り直してきた、と言っていい数字だ。バッテリーもモーターも「MLA-Flex」アーキテクチャにシームレスに統合されている。
JLRのビークル・エンジニアリング・ディレクター、マット・ベッカー氏は「剛性を高めたアーキテクチャと低重心化、緻密なトルク制御や先進のシャシー技術を組み合わせることで、よりシャープなレスポンス、優れた俊敏性、地面に吸いつくような安定感をもたらす」と説明している。
採用される先進シャシー技術の顔ぶれも豪華だ。アダプティブダイナミクス、ツインバルブダンパー、電子制御アクティブロールコントロール(eARC)、オールホイールステアリングを組み合わせる。ツインバルブダンパーとアダプティブダイナミクスは1秒間に500回、100ものパラメーターをモニタリングし、コーナリングやブレーキング時のロールやピッチを緻密に制御する。eARCは各アクスルに最大1,400Nmの力を加えて安定性を確保する。なお、eARCとオールホイールステアリングを含む「ダイナミックレスポンスプロ」は550PSモデルに標準装備、450PSモデルではオプション設定となる。

オフロード性能も妥協なし
パフォーマンス志向のEVと聞くと、サーキット寄りのセッティングを想像しがちだ。しかしこのモデルはレンジローバーの名を冠する以上、オフロード性能も抜かりない。
公式発表では渡河水深900mm、45度の急勾配での走行が可能とされている。これを支えるのが、バーチャル全輪駆動(AWD)と専用チューニングを施したインテリジェントトラクションマネージメントシステム、そしてダイナミックエアサスペンションだ。オールホイールステアリングも効いており、最終テストの舞台となった採石場では狭く急なヘアピンカーブを切り返しなしで駆け抜けたという。
その最終テストの舞台として選ばれたのは、イタリアのカッラーラ大理石採石場だった。磨き上げられた大理石の表面から大理石の粉が厚く堆積した場所まで、予測困難なコンディションの中で走破能力を実証している。さらに、グローバル試験・開発プログラムの最終段階として、日本・千葉県南房総市の「THE MAGARIGAWA CLUB」プライベートサーキットでもテストが行われた。レンジローバー スポーツがこれまで挑んできたパイクスピーク・ヒルクライムの記録的な登坂や天門山の999段の階段走破といったレガシーを、EVで継承しようという意志の表れといえる。

サウンドデザインという新発想
EVの弱点として語られることが多いのが「走る感覚の希薄さ」だ。エンジン音がない分、速度感や一体感が伝わりにくいという声は根強い。ランドローバーはこの課題に対して、独自のサウンドデザインという形で答えを出してきた。
エンジニアたちは、独自のシャシー設定のチューニングに加えて、走行特性を際立たせるサウンドの開発も手がけた。シンプルな音色を重ね合わせることで、音楽とエンジニアリングの境界を超えたサウンドデザインが生まれたという。
公式発表では、この特徴的な音響特性が「多彩なドライブモードを駆使したくなるような体験」を提供するとされている。走りの味つけをモードで選ぶ楽しさを、音の側から後押しする作り込みだ。感性に訴えるEVを本気で作ろうとしている姿勢が、この取り組みに表れている。

生産体制とカスタマイズ
「RANGE ROVER SPORT ELECTRIC」は英国ソリハルの生産ラインで製造される。同ラインではPHEV、ガソリン、ディーゼルといった他のパワートレイン搭載モデルも生産されており、複数のパワートレインを同じラインで作る体制が取られている。
車両アーキテクチャは「MLA-Flex」。118.5kWhのバッテリーと2基の260kWモーターが、このアーキテクチャにシームレスに統合されている。バッテリーの安全性についても、JLRの新しいバッテリー試験研究所でマイナス40度からプラス90度という過酷な環境下における多軸振動・衝撃テストを実施するなど、業界基準を上回る先進的な安全機能を備えるとしている。
パーソナライズの面では、レンジローバーのビスポークサービスが利用できる。ほぼ無限に存在するボディカラーや仕様の組み合わせ、より上質なマテリアル、オリジナル刺繍を含むパーソナライゼーションまで対応する。同じ一台が存在しないという所有体験の差別化は、ラグジュアリーブランドならではの提案といえる。
なお、日本導入時期や国内価格については、今回の公式発表には記載がない。続報に注目したい。

RANGE ROVER SPORT ELECTRIC 主要諸元
| 項目 | RANGE ROVER SPORT ELECTRIC |
|---|---|
| モーター | 260kW × 2基 |
| 最高出力 | 550PS(450PS仕様も設定) |
| 最大トルク | 850Nm(レンジローバー スポーツ史上最大) |
| 0-60mph加速 | 4.3秒(ダイナミックローンチモード作動時) |
| 0-100km/h加速 | 4.45秒(ダイナミックローンチモード作動時) |
| 駆動方式 | バーチャル全輪駆動(AWD) |
| バッテリー | 118.5kWh リチウムイオン(高強度アルミニウム製エンクロージャー) |
| 航続距離(WLTPモード) | 最大378マイル(約608km) |
| 航続距離(実走行) | 最大333マイル(約536km) |
| DC急速充電 | 最短10分で最大136マイル(約220km)ぶん/残量10%→80%が約22分 |
| ボディ剛性 | PHEVモデル比 61%向上 |
| 重心高 | PHEVモデル比 73mm低下 |
| 渡河水深 | 900mm |
| 登坂 | 45度の急勾配の走行が可能 |
| アーキテクチャ | MLA-Flex |
| 生産拠点 | 英国ソリハル工場 |
| 日本導入時期・国内価格 | 未発表 |
※数値はジャガー・ランドローバーが2026年9月30日(現地時間)に発表した公式プレスリリースに基づく欧州仕様の値。航続距離等はバッテリー満充電の状態でEU法規に基づき実施されたメーカー公式テストの結果で、比較を目的とした数値。実際の走行時の数値とは異なる場合があります。日本仕様の諸元、導入時期、国内価格は発表されていません。
Roadly編集部コメント
レンジローバー スポーツのEV化で特に注目したいのは、「走る喜び」の優先順位が明確に高いという点だ。リリースの中で「RANGE ROVER ELECTRIC」をわざわざ比較対象に置き、トルクの立ち上がりが50%速いと書いているあたりに、同じブランドのEVでもキャラクターを分けたいという意思がはっきり出ている。剛性61%向上、重心73mm低下という数字も、EV化のついでではなく走りのために取りに行った数字に見える。読む側として気になるのは、この性格づけが実際のステアリングフィールにどう出るかだ。日本での試乗機会を待ちたい。日本導入時期と国内価格は未発表なので、ラグジュアリーパフォーマンスSUV市場でどこに置かれるかも含めて、続報を追っていく。
レンジローバー スポーツ初のEVとなる「RANGE ROVER SPORT ELECTRIC」は、550PS・850Nmのパワートレインと、剛性と重心を作り直したシャシーで「スポーティング・ラグジュアリー」を名乗ってきた。日本仕様の詳細はまだ明かされていないが、Roadlyでは続報が入り次第お届けしていく。
情報源・出典
- 情報源:Land Rover 公式(日本)
- プレスリリースタイトル:五感に響くダイナミズムを追求したフルバッテリーEVモデル 新型「RANGE ROVER SPORT ELECTRIC」を発表
- プレスリリースURL:https://pr.jlrj.jp/articles/a2dff51e-a55d-4120-95d9-220dac1bc139
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。