スーパーチャージドV8を積む高性能SUVといえば、アストン マーティンDBX、ポルシェ カイエン ターボ、レンジローバー スポーツSVRといった名前が真っ先に浮かぶだろう。だが2022年型ジャガーF-Pace SVRの特別仕様「Edition 1988」は、それらと真剣に張り合える実力を持ちながら、価格は8万1000ポンドと多くのライバルの半値前後に収まる。SVO(スペシャル ビークル オペレーションズ)が1988年のジャガー・ル・マン優勝25周年を祝うべく仕立てた394台限定モデルで、プロジェクト8直系のメカニズムを継承しているという点も見逃せない。カーメディア「Harry’s Garage」が自ら所有するプロジェクト8との比較も交えながら徹底解説した動画は、ハイパフォーマンスSUVの購入を検討しているドライバーにとって必見の内容だ。
この動画のみどころ
- 394台限定のダーク・アメジスト×サンセットゴールドホイールという特別外装の実際の見え方
- プロジェクト8直系のZF製8速ギアボックスと700Nmトルクがもたらす走りの質感
- 2021年大幅刷新で何がどう変わったか——ボンネットライン、内装、ピヴィ・プロ搭載の全貌
- エアサス不使用のコイルスプリング+マグネティックダンパー仕様が生み出す乗り味の二面性
ル・マン優勝を纏う限定デザイン
Edition 1988の最大の個性はその外装にある。「ダーク・アメジスト」と名付けられたボディカラーは、屋内の照明下でようやくパープルの輝きが確認できる程度の深みを持ち、屋外では限りなくブラックに近い印象を与える。「Harry’s Garage」チャンネルを主宰するハリー氏は、自身のプロジェクト8と並べて比較し「思ったほど派手には出ない」とコメントしているが、それがむしろ普段使いしやすい上品さにつながっているとも言える。
サンセットゴールドの鍛造ホイール、ブラックのブレーキキャリパー、ゴールドのジャガー・リーパー(跳躍するジャガーのエンブレム)など、スポーツカー的な主張を節度ある範囲に留めたデザインはジャガーらしい品格を感じさせる。鍛造ホイールは軽量化にも貢献しており、車重は2050kg台と、このカテゴリーでは競争力のある数字に抑えられている。唯一気になる点として、大径クローム仕上げのエキゾーストパイプは現代の価値観とやや乖離している印象もあり、このあたりはオーナーの好みが分かれるところだ。

2021年刷新で別グルマに進化した実力
2021年型(ジャガーの呼称では2022モデルイヤー)へのアップデートは、F-Pace SVRを根本から変えたと言っても過言ではない。最も象徴的な変更がフロントボンネットラインの見直しだ。旧型ではボンネットパネルが前端手前で終わり、フロントリップとの間に不自然な継ぎ目が生じていた。ハリー氏が「いつもボンネットが閉まっていないように見えた」と指摘していたこの課題を、新型は大掛かりなエンジニアリング変更によってボンネットメタルをフロント先端まで延長することで解消。外観の完成度を大きく高めた。
メカニズム面での目玉はプロジェクト8のZF製8速ギアボックスを移植したことだ。トルク容量が700Nmに拡大されたことで5リッター・スーパーチャージドV8の550馬力(プロジェクト8は600馬力)をより確実に路面へ伝達でき、変速速度もシャープになった。0-60mph(約97km/h)加速は3.8秒台とされており、コイルスプリング+マグネティックダンパーという、このクラスの多くがエアサスを採用する中では異端ともいえる足回りが、ドライバーズカーとしての素性の高さを支えている。

日常と非日常を両立するキャビン
インテリアも2021年の刷新で劇的に向上した分野のひとつだ。旧型に対し「座っていて気持ちが上がらない空間だった」という評価が少なくなかったが、新型ではステアリングホイールのデザインを一新し、アルミ製シフトパドルを装備。インフォテインメントにはランドローバーグループ共通の「ピヴィ・プロ」システムを採用し、大型湾曲ディスプレイによる操作性と視認性の高さを実現している。ヘッドアップディスプレイやパノラミックルーフも装備し、日常的な快適性にも抜かりはない。
シートはプロジェクト8と共通のバケット形状を採用しており、ハリー氏は「長距離ドライブでも疲れにくく、体をしっかりホールドしてくれる」と高く評価している。シートバック厚みを抑えた設計により後席の足元空間も確保されており、ファミリーユースにも対応できるユーティリティの高さは、週末ドライバーには特に魅力的なポイントだろう。エキゾーストバルブの開閉によって静粛なスクールランモードから野太いV8サウンドへと豹変するキャラクターの二面性も、このクルマを所有する喜びのひとつと言える。

Roadly編集部コメント
Roadly編集部として注目したいのは、このクルマの「コストパフォーマンスという名の現実解」という側面だ。アストン マーティンDBX707(英国価格換算で約19万ポンド超)やポルシェ カイエン ターボGT(同約17万ポンド超)と比較した場合、F-Pace SVR Edition 1988の8万1000ポンドという価格は圧倒的に現実的だ。プロジェクト8の約半額で、そのDNAを色濃く受け継ぐ550馬力SUVを手に入れられるというのは、クルマ好きの30〜40代にとってかなりの説得力を持つ。限定394台という希少性も長期的な資産価値の観点から興味深い。日常の買い物から週末のワインディングロードまでをこなすオールラウンダーを求めているなら、ぜひ候補リストに加えてほしい一台だ。
ライバルの半値でプロジェクト8のエッセンスを享受できる——それがF-Pace SVR Edition 1988の本質だ。「Harry’s Garage」チャンネルの動画ではドライビングシーンも収録されており、このクルマの走りの二面性をより深く体感できる。ぜひ本編もチェックしてほしい。
動画情報
- タイトル:Jaguar F-Pace SVR 1988 edition. Why you should buy this & not an Aston DBX, Cayenne turbo, SVR, etc.
- チャンネル:Harry’s garage
- 動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=gD-k0ApuOnc
※本記事は上記の動画を参考に、編集部が独自に構成・執筆しています。