アウディは2026年6月、欧州公式メディアセンターを通じてA3シリーズの大規模アップグレードを発表した。刷新の柱は3つ。曲面パノラマディスプレイを中心に据えた完全新設計のコックピット、自動車線変更や信号対応まで進化した運転支援パッケージ、そしてS3とRS 3に与えられた専用デジタルDRLシグネチャーだ。スポーツバック・セダン・allstreetの3ボディに加え、プラグインハイブリッドや333PSのS3、400PSのRS 3まで全グレードが対象となる今回の改良は、コンパクトプレミアムセグメントの基準を引き上げる可能性を秘めている。日本市場への導入詳細はまだ明らかになっていないが、そのポイントを整理した。
この記事のポイント
- 11.9インチ+12.8インチの曲面デュアルディスプレイを採用した完全新設計コックピット
- 自動車線変更・信号発進対応のアダプティブクルーズアシストプラスを新搭載
- PHEVはWLTP電気航続距離最大143km、DC急速充電で約30分フル充電が可能
完全新設計のコックピット
今回のアップグレードで最も目を引くのが、インテリアの全面刷新だ。アウディ公式の発表によれば、新コックピットの中核を担うのは11.9インチのアウディバーチャルコックピットと12.8インチのMMIパノラマディスプレイを一体化した曲面デュアルスクリーン。ダッシュボードのデコレーティブインレイはこれまでより幅広になり、インストルメントクラスターから助手席ドアまでを水平に貫く連続したラインを形成する。
素材は4種類が設定されており、カーボンファイバーとDinamicaマイクロファイバーのほか、「Light crepe(新色)」と「Impressum black」の2種類のテキスタイルから選べる。また、センターコンソールはドライバーズオリエンテッドのデザインに刷新され、スマートフォントレイには25Wワイヤレス充電機能を標準装備。全ステアリングホイールには物理スクロールホイールが組み込まれ、S lineおよびSモデル向けにフラットトップ・フラットボトム形状の3スポークタイプを含む計3種類のデザインが用意される。
BMW 1シリーズやメルセデス・ベンツAクラスといったライバルが相次いでデジタルコックピットを強化するなか、A3はこのタイミングで一気に差を詰めにきた印象だ。特に曲面ディスプレイの採用は上位モデルで先行したデザイン言語をコンパクトクラスに展開するもので、車格を超えたプレミアム感を演出する。

3段階の運転支援パッケージ
アシスタンスシステムはTech・Tech plus・Tech proの3段階パッケージとして再編成された。中核機能となる「アダプティブクルーズアシストプラス」は、最大210km/hまでの縦横両方向の制御を提供し、AT車ではターンシグナルを操作するだけで高速道路上の自動車線変更が可能。さらに今回新たに加わった機能として、赤信号での自動ブレーキと、青信号への変化に応じた自動発進(完全停止前の場合)が挙げられる。
注目すべきは「スウォームデータ」の活用だ。周辺車両の走行データを集約して速度を最適化するこの機能により、単体センサーでは対応しにくい状況でもより自然な走行が実現する。さらにオンラインデータを利用することで、白線が見えない路面でも車線維持が可能になるという。このオンラインデータ機能は納車後3年間は標準提供され、以降は有料で延長できる。
駐車支援も大幅に強化された。4基のワイドアングルサラウンドビューカメラが360度3D映像をMMIに表示し、コインパーキングや洗車機での位置合わせにも役立てられる。「パークアシストプロ」では、myAudiアプリを通じてドライバーが車外に出た状態でのリモート駐車が可能となった。さらに「トレーンドパーキング」機能では特定の駐車操作(例:自宅の狭いカーポート)を一度記憶させると、以降は自動で同じ操作を再現する。最大5つの操作(各50m以内)をMMI上に名前付きで登録できる点も実用的だ。

デジタルコネクト機能の充実
アウディコネクトのデジタルサービスも今回拡充された。myAudiアプリからは走行距離・燃料残量・航続可能距離・タイヤ空気圧・オイルレベル・サービス時期といった車両情報を一元管理でき、リモートエアコン操作や遠隔ロック/アンロックにも対応する。
新たに加わったリモート機能では、駐車位置をマップ上で確認できるほか、パーキングブレーキの状態・ライトの点灯状態・ドアやウインドウの開閉状態もスマートフォンから把握可能になった。
「Functions on demand」による後付け機能拡張にも対応しており、納車後にサブスクリプション形式でオーディオパッケージ(低音強化・ソース間音量バランス・圧縮音源の音質改善)やバーチャルサラウンドサウンド(コンサートホールからレコーディングスタジオまでの音場シミュレーション)を追加できる。こうしたOTAライクな機能拡張の仕組みは、購入後も車をアップデートし続けたい層にとって大きな魅力になるだろう。

パワートレインと価格帯
ラインナップはスポーツバック・セダン・A3 allstreet(2024年春導入済み、スポーツバック比+3cmの最低地上高)の3ボディに、複数のパワートレインが組み合わさる構成だ。
ガソリン・ディーゼルは85kW(116PS)と110kW(150PS)の2種類。PHEVの「A3 e-hybrid」はシステム出力150kW(204PS)と200kW(272PS)の2段階が用意され、WLTPでの電気航続距離は最大143kmを達成。DCポートによる急速充電で約30分でのフル充電が可能になったほか、トレーラー牽引能力が従来比300kg増の1,700kgに拡大された点も見逃せない。
スポーツモデルでは、S3が245kW(333PS)の4気筒ターボ+クワトロ+トルクスプリッター(後輪間のトルク可変配分)を搭載。RS 3は2.5TFSI 5気筒ユニットで294kW(400PS)を発揮し、同じくクワトロとトルクスプリッターを組み合わせる。S3とRS 3にはシングルフレームグリル内の専用バッジと固有のデジタルDRLシグネチャーが与えられ、RS 3はチェッカーフラッグをモチーフとしたデザインが採用される。また、全モデルのマトリクスLEDヘッドライトには4種類のDRLシグネチャーが設定されMMIからカスタマイズ可能で、ベースモデル向けには3種類が全面刷新された。
ドイツ国内参考価格は、A3スポーツバックが31,850ユーロ(約500万円前後)から。A3スポーツバックe-hybridが45,350ユーロ、S3が57,200ユーロ、RS 3が68,500ユーロからとなっている(いずれもドイツ市場価格)。日本での価格・発売時期については現時点では未発表であり、今後の正式発表を待ちたい。

グレード・パワートレイン・価格(早見表)
プレスリリースで公表された主要グレードのパワートレインとドイツ市場価格を整理した。発売は2026年9月中旬予定。
| グレード | パワートレイン/最高出力 | 駆動 | 価格(独) |
|---|---|---|---|
| A3(ガソリン/ディーゼル) | 85kW(116PS)/110kW(150PS) | FWD | 31,850ユーロ〜 |
| A3 e-hybrid(PHEV) | 150kW(204PS)/200kW(272PS) | FWD | 45,350ユーロ〜 |
| S3 | 2.0L 直4ターボ 245kW(333PS) | quattro | 57,200ユーロ〜 |
| RS 3 | 2.5L 直5 TFSI 294kW(400PS) | quattro | 68,500ユーロ〜 |
※ドイツ市場の参考価格(2026年9月中旬発売予定)。価格はSportback/Sportback e-hybridの起点。e-hybridはEV航続最大143km(WLTP)・DC急速充電 約30分フル・牽引1,700kg。日本での価格・導入時期は本稿執筆時点で未発表(円換算は為替により変動)。
Roadly編集部コメント
個人的に注目したいのは「トレーンドパーキング」機能だ。自宅の狭いカーポートや機械式駐車場など、繰り返す特定の駐車操作を車自身に記憶させるというアイデアは、まさに日本の住宅事情にフィットする。駐車が得意でないパートナーや家族が使う場面でも安心感が増す。また、PHEVの電気航続距離143kmは、首都圏や関西圏の日常的な移動であれば多くのケースでEV走行のみで賄える数字。ガソリン車として使いつつ電気でもしっかり走れる実用性は、A3というボディサイズと組み合わさったとき特に魅力的に映る。スポーツ志向であればRS 3の400PSとチェッカーフラッグDRLのコンビは、細部へのこだわりに唸らせられる。
コンパクトプレミアムの定番モデルが、デジタルと安全の両面で大きく生まれ変わる。日本市場への導入詳細はまだ明らかになっていないが、Roadlyでは続報を引き続きフォローしていく。
情報源・出典
- 情報源:Audi 公式(欧州)
- プレスリリースタイトル:Upgrade for Audi A3 models
- プレスリリースURL:https://www.audi-mediacenter.com/en/press-releases/upgrade-for-audi-a3-models-18028
本記事は上記のメーカー公式プレスリリースを情報源として、Roadly編集部が事実情報を再構成・独自視点で執筆した解説記事です。プレスリリースの文章・構成・画像を複製したものではありません。詳細は上記リンクよりご確認ください。
※本記事は情報提供を目的とした解説であり、商品・サービスの購入や投資判断を推奨するものではありません。スペック・価格・発売時期等は変更される場合があります。